エピローグ



「母さん、行ってくるよ」




退院した翌日、俺は神威と二人

マンションを後にする。




俺が運転する愛車で向かうのは、

昂燿校と俺たちの故郷、安倍村。




昂燿校で、まず昂燿から海神へと転校手続きを終えて

アイツの荷物を梱包して運び出す。


荷物はその場で、

配達業者を手配して海神校へと発送する。




その後、再び車を走らせて安倍村へと入る。





華月入院の今、代行業務を万葉が委任されて

代行している。




二時間半の道程を走らせて辿り着いた先、

俺たちは数日ぶりに、総本家の門を潜った。





「お帰りなさいませ。

 ご当主、飛翔さま」




何事もなかったかのように、万葉を筆頭に俺たちを

邸の中に招き入れる。




恐る恐る踏み入れた屋敷内も、

あの重苦しかった圧迫感は今は消えていた。




「万葉、華月が帰るまで村のことは任せる。

 今日は父の墓参りをして向こうに帰る。


 飛翔と行動を共にする。

 お前は成すべきことを」




神威は万葉に告げると、万葉はもう一度深くお辞儀をして

その場から姿を消した。





その後、俺と神威は二人

山道を通って、あの日、黄金の雨が降り注いだ

白浜を超えた向こうにひっそりと立つお墓へと向かった。




俺の一族が順番に弔われているお墓。




俺の両親の墓の隣、

見慣れない墓が並ぶ。




実感なく事実を受け止めようとしていた

俺の中に大きな衝撃が走る。





「飛翔……ボクの父さんと母さんのお墓……」




先に手を合わせる神威の後ろで、

冷たい墓石を見つめる。







神威に促されて、先に両親の墓に静かに手を合わせて

隣の兄貴の墓の前にゆっくりと向き合う。





*




なぁ、兄貴……。



来るの遅くなって悪かったな。

神威は俺が預かるから。


この龍の刻印と共にな。


だから……見守ってくれよ。




*



ゆっくりと手を合わせる。




すると……あの日と同じように、

優しい黄金の雨が降り注いだ。











あの日、静かに降りはじめた雨。



長い時間痛みを伴い続けた雨は

長い時間を超えて、

慈しみの雨へと姿を変えていく。






雨の向こう側。








虹の架け橋を育てながら、

新しい未来を歩いていく。





a rainy insilence






静寂の時間は

今、ゆっくりと動き始める。











The End







 

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