第2話 何ができるのか

授業が終わった。学校に行ったことのある人ならわかるだろう。休み時間はとても騒がしい。今も昔も変わらない学校の風景だ。

錬金術があってもなくても、学生というのは騒がしいものなのだ。よくあるのはしゃべる集団ごとにグループが形成されその中で騒がしくなるパターンだろう。

そしてこのクラスが始まりもう半年。半年経てばクラスでもグループが形成される。


例えば、『騒がしい』を代表するようなうるさいけど気さくな男子達。

例えば、『元気』を代表するようなポジティブな女子達。

例えば、『寡黙』を代表するような私みたいなグループ。


だがこのグループには意味がある。


『騒がしい』のグループは錬金術の身体機能への応用の研究。

『元気』のグループは錬金術を用いた不老不死への挑戦。

『寡黙』のグループは錬金術を用いた新技術の研究。


と言ったように、ここ『アルバ錬金術高等学園』ではクラス分けをした後にやりたい分野を選択し、グループ分けを行う。その後3年かけて研究を行い発表するカリキュラムで授業が進んでいく。


錬金術で何がどこまで可能なのか。それは錬金術が体系化されて20年経った今でも誰にも輪からない。錬金術を体系化した、いわば錬金術の生みの親であるアルバート・スミスも錬金術の限界点に生涯辿り着けなかったという。


とまあ、長々と話してきたけど。最近ではどこの高校もこんな感じ。授業も常識的な内容に歴史を絡めて説明しているだけ。正直退屈。

そんな物語のプロローグにも満たないことを頬杖をつきながら考えていると

『おーい、さなちゃ〜ん』

教室の外から呼び声がする。入り口に向かいながら教室の外に向かって声をかける。

『遙じゃん。どうした?何か用?』

彼女は新島遙。私の幼稚園の頃からの幼馴染だ。ドジっ子を極めた人間と言っても過言ではない。見た目もふんわりした感じの美少女だ。同性の私から見ても可愛すぎるとしか言いようがないルックスだ。おまけに男子の視線が釘付けになるほどの圧倒的な胸の暴力。

そんなくだらないことを考えていると、遙が喋り出す。

『次の時間錬金術のテストでね〜紙の媒体なら何を持ち込んでもいいらしいの。だからノート貸して欲しいな〜って思ってね?』

『な〜んだ、そんなことね。いいよ。探してくるからちょっと待っていて。』

そう告げて私は一度、席の方へと戻っていく。

すると教室の外から

『そういえばなんだけどね〜、私今日からさなちゃんの家に住むからよろしくね?』

『うん、わかった。』

教室内の空気が変わる。そんなことを感じたが気にせずノートをさがs…

ん?ノート探しながらだったから、反射的に答えたけど今、遥なんて言った?

『遙?イマナンテ?』

ついカタコトで聞いてしまう。

『だからね〜、今日からさなちゃんの家に住むからよろしくね?って言ったの。』


「「「えーーーー?!?!?!」」」


クラスにさまざまな声が響き渡る。

「あの二人が同居?!」

「なんか男装の麗人と、お姫様って感じだから、合いそうだよね?」

「Ohナンテコッタイ!!トッテモ、オニアーイデスネー!!」

最後のやつ、カタコトの部分にツッコミしやがって。あとで覚えとけよ。

だが、かくゆう私も困惑しまくっている。

正直錬金術のテスト用ノートのこととかどうでもいい。え?一緒に住む?

考えたこともない。どうしよう。一人暮らし中だから住んでもらう分には問題ないのか?

思考がまとまらない。そして一言。


『私の家でよければ。』


ここからだった。この一言だった。ここが始まりだった。

始まりの物語にしてはとても平和的で。日常的な。幼馴染との会話のワンシーン。彼女との同居によって数多もあった未来が2つの結末にまで収束された。

誰が想像できるのだろうか、1つの未来では幼馴染が絶望の末、涙ながらに私の死を見届けることになるなんて。

今の私にはその選択の権利も。その結果を変える手立ても。何ができるのか。何もわからないのだ。

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