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第1話 授業中の出来事
錬金術。
それは、古代ギリシアから始まった。
魔法、魔術それらのような超常的な力を用いた技術とは異なり、化学的手段を用いて卑金属から貴金属を精錬しようとする試みのことだ。最も、最終的な目的は究極の物質たる『賢者の石』を作り出すことだ。
だが、錬金術は机上の空論だった。
新しい元素。新しい物質。新しい機器。化学を進歩させるには十分な成果だ。しかし最終目標たる賢者の石どころか、原初の目的である貴金属の精錬。つまりは価値の低いものから価値のあるものを生み出そうとする試みすら、1度たりとも成功しなかった。
それも2085年までの話だ。
2085年2月18日。とある科学者が過去の研究を再現しようとさまざまなことを試みた。そこには不可能だったことや、無駄だと学会から放棄された研究も含まれていた。
その科学者は錬金術に目をつけた。万物を創造し、不老不死にするという賢者の石に興味を持ったのだ。
2085年5月30日。その科学者は気づいた。賢者の石とは複数の石が伝承が伝わる上で一つにまとめられたものなのではないか。という可能性だ。確かに考えてみればその通りだった。不老不死を実現する石と、卑金属を貴金属にする石が全く同じ作り方で同じ物質なわけがないと。
2085年10月1日。科学者は卑金属を貴金属にする石を研究の末に精製した。この石は2つの効果を保有していた。1つ目は物質に特性を付与する効果。2つ目は物質を複製する効果。
1つ目の効果は、例を出した方が早いだろう。例えば、非金属の代表と言えば鉄だろう。鉄が卑金属たる所以の一つがイオン化傾向が大きく酸化しやすい点だろう。ではもしこの鉄にイオン化傾向が、『小さく』なるという特性を付与したらどうなるのか。結果は『原子量の比較的近い物質へと変化する』だった。だが、この変化にはランダム要素が含まれているが、傾向はわかってきている。近い物質でない場合は約2から4倍ほどの原子量の物質に変化するという点だ。鉄が近い物質に変化しない場合は金になりやすいということだ。
2つ目の物質の複製は、この石自体を媒体にして近くの物質を複製させることができるという効果だった。近くというのは空気中にある物質も含んでしまうわけではなく、固形としての形を保つことのできる物質にこの石を接触させることで変化する。この物質は保管する際に一時的に電力を流すことで複製を妨げることが可能だと報告されている。
また、1つ目の特性を付与する場合は、2つ目の効果で非金属を複製。その後に与えたい効果を持つ物質の破片などを接触させることで、複製させた大きさの別の物資へと変化させることができる。
2085年12月20日。科学者は研究成果を学会にて発表する。そして錬金術の有用性を世に示した。
「ここまでが現在2108年の科学の進歩に大きく貢献した科学者『アルバート・スミス』の研究成果の一つよ。ここはテストで絶対出るから覚えておくようにね?。」
「「「わかりましたーー」」」
「はぁぁぁ。みんな本当に分かってるの?」
「大丈夫ですって先生。そんな当たり前のこと小学生でも知ってますから!」
「まぁ。それもそうね♩じゃあ今日の課題を説明するわね。まずレポートの課題を...」
騒々しい教室。今は授業時間だろう。そんな真面目なことを考えている自分がバカらしくなるほどこのクラスは気楽だ。
「白浜さん?」
「はい?」
「今課題の説明をしましたが聞いていましたか?」
「レポートと研究成果の応用を考えてプレゼンボードにする。ですよね?」
「はい!問題ないみたいですね?相変わらず白浜さんは話を聞いてないように見えるのにちゃんと聞いていてくれたんですね!他の聞いてない子たちはもっと白浜さんを見習ってほしいですね」
「ダメですよ先生。私の真似をそういう人がしたらただ話を聞かない人ができるだけですよ。」
「それもそうですね♩」
「「「うわぁー せんせーひどーい」」」
キーンコーンカーンコーンとチャイムの音が鳴り響く。
「おっと長話をしてしまいましたね。それでは今日の授業はここまで。来週までに課題をしっかりやってきてくださいねー♩」
「「「ありがとうございましたー」」」
退屈な授業がやっと終わりを告げた。
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