三 夜這い
雪の降り頻る
(おおかた、
あり得る。
毒にみせられた姫君に文を送れば、どうなるのか──じつに
そうおもっていた矢先、凛、と、鈴の音が鳴った。
いや、祭でもないのに、鳴るわけがない。
「《毒鬼姫》と称ばれているのだから、どんな
「
「そうだよ。
逆だ。
奇しい光だ。
(そして、彼の目は濁っている。ということは)
「貴男、《
「やはりね、
「
(父上、幾らなんでも
患者の
「貴男を蝕んでいるのは《
「その説明は禁毒卿からも受けたね」
「左様ですか。云っておきますが、《毒鬼》に確立した治療法はありませぬ。《盲輝》も
詳らかな説明を聞いて、
「君は僕を治せるかい」
「貴男を実験体にしてしまうけれども」
「かまわない。……死なないんだろう?」
「死ぬんだったらやらないでしょう」
だろうね、と
「では、注射器をもってきます」
「診療室には、僕も行った方がよいかな?」
「動くな」
びくりっと震えあがったあと、
なにかの術ともとれるが、先ほどの
「動くな。動けば、粉が舞う」
先ほどのような
(どうして《毒鬼姫》と云われるのか理解らないほどに、
◇
「まだ動かないで」
ほんのすこしの間をおき、
「注射器をもってきましたから」
「……眼球に、刺すのかい?」
「眼球に
これを眼球に刺されるのか、と、
「目は閉ざさないで。薬が
眼球の
目に張られた異物感がどうも消えない。
「いまのが注射だと?」
「正確には《
いま差した眼薬は液状のものだ。
途端。
「視界に……粉が、散らつかない」
「それでいて《眼薬》ですので。……されど、これで
「
治療は続けることがたいせつだ。どんなに効果的な治療法でも、ほんのすこし顕れる副作用と病の症状に
体質があわなければ、該当の症状が顕れて、すぐさま治療法を変える。
よって体質にあわない治療法を続けることは理論上絶対にないのである。
あくまで理論上、だが。
「あと、目を
普通は自分の
「……ここは君の
「たぶん、
月と雪に照らされた姫君は、ひどく
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