二 美味き毒は薬膳料理
「うわあ……! 京の都はこんなに立派なのですね……!」
高官の
うまいこと顔を
三十手前ほどにみえる。
「
「さね、ね。よろしく頼むよ。ただ、うちの姫様はちょっと――いやかなり奇妙なひとだからね。いちおう、そこの
「そうなんですね! なにをしているんでしょう……」
今日から仕える主君の顔くらい、
さねは、男の目がないことを確認し、
きょろきょろとあたりを見回していると、
(これが雪……初めてみた)
その銀世界のなか、ぽつりと一軒、
「ここが離だよ。姫様は寝られるときのほかは、ここに
「なるほど……」
近づいて、扉を開けたとき。
「やめな!!」
(うっ……!?)
(こ……これは……!?)
「あぶない。直接吸ったら、鼻の
若い娘の声にうながされ、
夜霧が
「大丈夫かい。一日目からご苦労さん。ったく、だから扉を開けようとしたとき、やめろ!! と
「はい……すみませんでした……」
ごくごくと水を
「さっき私を
「そうだよ。あんたが仕えるね。
さねは
「禁毒卿?」
「……あぁ、わすれてた。《
都では、病因不明、毎日のように患者がふえていき、完治した例はない――という
昨日も《毒鬼》の患者がここに来ていた。とらわれた記憶を
いまだ治療法が確立しない《毒鬼》を研究、
「ここは、禁毒卿のお邸なのですね……」
「そうだね。禁毒卿とその奥様方、それから子女様方が住まわれている。女房もふくめれば、さらにおおいというのは、さねも
「はい!」
「禁毒卿の三の姫様が私の主君なのだけれども――」
コリッ、カリッ、と。途端、
みれば、
「
箸でつかまれていたのは、ぷるりとした質感をたもった、生きたままの姿の
「ひ、ひいっ……!? な、なに、なに食べてるんですかー!?」
「
「しし、知っております。ですが、ももも、猛毒でしょう!? 食べるなんてもってのほか――っていうか、おもいっきり触手が刺さってますよ!?」
「そう、猛毒だけれど」
目玉を
「……もしかして、禁毒寮の三の姫様の――」
「そう。
ちゅるり、と。
「……どく、き、ひめ……」
「ほかにも、《毒喰い鬼》とも呼ばれている。毒に魅せられた
自分と
(もしかして、ほんとうに
◇
「美味き毒は薬膳料理」
目の前の姫君はやはり
「私が《毒鬼姫》と呼ばれる
ときには死にいたる毒は、彼女にとって、これ以上ない栄養食、薬膳料理なのだと。
「
「え、ええ……」
でも、そんな私にも、と。そう云いながら
「手紙が届いてる」
さねがのぞきこむと、書かれていたのは、
「恋文……?」
あひみては 心もかくる しののめの
「『
「いつみたのか
「まさかとはおもうけど、姫様のところに、夜来るとかは、あるのかね?」
「返歌も送ったし、あるとおもうわ」
禁毒卿邸へと足をはこぶ、光をまとったひとつの影があった。
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