差し伸べられた手
そして三日後のその日がやってきた。救助艇かと思っていたが、実際に来たのはヘリコプターだった。海上保安庁なのは予測通りだが。
バルルルルルル、という轟音が、僕を怪異の世界から現実へと引き戻そうとしている。
「澪!」
「はい!」
「なんか、ヘリコプターがうるさくて、雰囲気ある感じで言えそうになくてごめん! でも、もしかしたら! これ聞いちゃいけないのかもしれないけど、これだけ最後に言わせて!」
「なんでしょうか!」
お互い叫びあっている。彼女は怪異であるわけだが、ヘリコプターを静かにさせることはできないし、ヘリコプターの轟音の中で意思疎通をすれば、怪異でもこうなるという寸法であるらしい。
そして、僕は言った。決死の覚悟だった。
「君は、僕と一緒に来る気があるか!?」
そのとき。澪は、ぽつり、と涙を落した。
「え……?」
さて。いちかばちかだ。今のが禁忌の質問だったのだとすれば、これでおそらくおしまいだ。ヘリコプターが墜落したり、あるいはもっとひどいことが起こるのだろう。
「あ、いえ! 大丈夫です! その質問ではありません! わたしが、恐れていたのは……! その質問ではないんです!」
そうか。良かった。
「だから、その……!」
澪は僕に向かって、手を差し伸べた。
「行きます! ……一緒にっ!」
僕はその手を、確かに握り返す。
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