第13話 東の噂
「あっ響居たっす、お客っすよ」
どうやら今日も俺に客らしい、今度は明澄が男装してるとかじゃないよな。いや明澄は部室にいるからそれはないな。
「今日はどうしたんだ」
「響にだけ話したいことがあってこっちに来てもらっていいすか」
俺は錬、碧、明澄の三人を部室に残し部屋を出てひとけのない場所へと移動する。
「紹介するっす、サッカー部の先輩の獅王っす」
「初めまして、紺野獅王『しおう』…です」
名前の割にオドオドしてるな。それに体がペラペラだけど運動できるのか。
「こんにちは俺に何か用?」
「テストでいい点を取らせてください!」
急に大きい声出すなよびっくりするだろ。
「わかったそれで俺に何をしてほしいんだ」
「定期テストに出てる問題を教えて欲しい…です」
うんうん、確かにどの問題が出るか分かってたらテストなんて楽勝だよな。
「そうかつまり先生からテストの内容を盗んでこいってことか」
「はいっ!そういうことっすね」
「ムリ!帰って勉強をしてくれ」
そんなのカンニングよりやばくないか、バレたら普通に退学だぞ。だから俺だけをここに連れてきたのか。
「そう言わないで大学の推薦のために必要なんだよ」
「はぁ〜俊説明を頼む」
「了解っす、まず先輩はサッカーで大学からスポーツ推薦が来てるっす」
「いいじゃんそれで大学行けよ」
「でもそこは理系の大学で理系科目のどれかで評定4以上は必要なんすよ、しかし先輩は理系科目が全然全くだめっだめっす」
「そこで俺と響でテストを盗んで来てほしいと言うことっす」
「そうです、本当に助けてください」
「無理なものは無理だ俊も分かるだろ」
俺と俊と副会長が力を合わせてやろうと思えばできなくはないかもしれないがそこまでのリスクを冒すメリットがない。
「そうっすね、でも先輩は理科室の音を聞いたことがあるらしいっす」
「理科室の音って、七不思議のやつか」
「そうっす、テストを盗んで来きてくれたらその時のことを教えてくれるらしいっす」
底花高校七不思議の東の噂、理科室から響く奇妙な音、人体模型が動いて鳴らしてるのではとか化学の先生が怪しい実験をしているのではと言われている。
「う〜ん、それでも無理だリスクが大きすぎる」
「じゃあ勉強を教えてください、君この学校では頭がいいって一年生の頃に学年一位を取ったこともあると」
確かに俺は一年生の最初のテストだけ一位を取ったことがある。その後はずっと二位だ
「よく知ってるな誰から聞いた」
「んっ」
獅王はスッと隣を指さす。
「お前か俊」
「てへっ」
てへっじゃねえよ俺を売っただろ。
「俊だって成績割と良いほうだろ、お前が勉強を教えてやれよ」
「俺は暗記でゴリ押してるだけっす、人に教えることはできないっすよそれに響のほうが成績がいいのは事実なんすから」
こいつ記憶力は良いからな、人脈を支えてる一つなんだろう。
「そもそも三年生なんだし同学年に教えてもらえよ、俺は三年生の授業内容なんて知らないぞ」
「三年生はみんな自分のことでいっぱいなんすよ」
「じゃあ二年の学年一位に教えてもらえば俊なら誰か知ってるだろ」
「あの人苦手だ」
あれっ獅王も知ってる人なのか
「そうなのかそれで一位って誰なの」
「知らないんすか歌織っすよ」
歌織、歌織って誰だ少し前に聞いたことあるんだけどな。
「副会長のことっすよ、だから副会長は響のことをライバル視してるんすよ」
あぁ〜そうそうそんな名前だった、ずっと副会長って認識だったから忘れてた、そうだったのか確かに苦手な人には苦手だよなああいう性格は。
「頼む勉強のやり方とかは教えられるだろ」
「響、ここで情報を逃していいんすか」
「ん〜じゃあ先に七不思議について話してくれるなら」
「しょうがない、わかった約束は守ってくれよこっちは生活がかかってるんだ」
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