第12話 女装

「響いるっすか」


 俊が部室に入ってくる、何か俺に用があるらしい。


「いるぞ、今日はどうした」


「響にお客っすよ」


 俺を直接指名か副会長以来だな。


「どうした、新聞部か」


「違うっすよそれはもう少し待って欲しいらしいっす、どうぞ入っていいっすよ」


 俊の後ろから小柄で可愛らしい女子が恥ずかしそうに姿を現す。


「は、はじめましてひびきさん」


「……って碧じゃん何やってんだよ!」


 そこには碧がスカートを履いて立っている、ちゃっかりメイクもしてるし。


「なんでわかるんすか」


「は、恥ずかしいです早く脱いでいいですか」


 本当に何やってるんだ、声を聞くまで誰か分からなかったぞ。


「なんだつまんないっすね、せっかく明澄に手伝ってもらったのに」


「ねぇ〜これ可愛く見えるでしょ〜」


 確かに可哀想だ。俺は碧をじっと見つめる、別にこれは碧が可愛くて結構ありだなとか考えているからではない……はずだ。


「スカートはどうしたんだよ」


「それは私のよ〜」


 本当だ、でも明澄の履いてズボンがダボダボだ、逆に俊の履いてズボンピチピチだ、つまり、明澄のスカートを碧が履いて碧のズボンを俊の履いて俊のズボンを明澄が履いてるって訳か。


「ちなみに誰が言い出したんだ」


「私よ〜碧は絶対磨けば光ると思ってたのよ〜」


「嫌がったら俊に拘束されて無理やり、それでせっかくならということで響に見せることになりました」


 そうか碧には悪いがそれは想像しただけで面白いな、現場に居合わせたかった、動画撮ってないかな。


「今何か悪いことを考えてましたね」


 何っ!表情に出して無いのに、もしかしてこいつ人の心が読めるのか。


「もう一年以上一緒ですからこのくらい分かりますよ」


 こいつ心を読んで会話を成立させている。


「日直の仕事があって遅れたすまん、何の話してたんだ」


 日直の仕事を終えた錬が部室に入って来た。


「あっほら錬、客が来てるぞ挨拶しろ」


 碧が女装した姿を錬に見せる。


「はじめまして……」


 なんか話せよ、錬は人見知りだからな俺たちを介してじゃないと他人とうまく話せない。


「はい初めまして」


 碧、俊、明澄の三人はは笑いを堪えるのに必死だ。それにしても碧は何も言わないのか結構乗り気じゃん。


「えっと、その〜今日はなんのゴヨウでしょうかオジョウサン」


 緊張してカタコトになってるぞ、あとあんまりこっちを見るなよ錬、助け舟は出さないぞ。


「大した用じゃないんだけど、れんさんと二人きりになりたいなってだめ……ですか」


 上目遣いは反則だろ、こいつ声も変えて来やがった、さっき俺が声で碧だって気づいたって言ってないよなやっぱり心を読めるんじゃ。


「…………」


 あっ錬が固まって動かなくなった。


「錬がフリーズしたっす」


「お~い大丈夫ですか〜」


 明澄が錬の顔の前で手をひらひらと振るが反応がない。


「少々やりずぎてしまいましたね」


 錬は女子に対する免疫が低いからな、まぁ正面からあの顔であの声であの仕草をされたら俺も理性を保てる気がしない。


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