4. 星が降る夜
窓から見えるその景色に見惚れていた。それは八月のどこか風が冷たい夜だった。空には無数の星が降り注いで着地と同時に閃光を放った。僕はそれを必死に追いかけていた。いつまで経っても追いつけない景色に嫌気が差した頃、僕の前にもそれが落ちた。気がつくとそこには見慣れた天井と母の声が聞こえる。完全に目が覚めた様だった。さっきまでの出来事は夢だったと気がつくまで時間はかからなかった。支度を始めそんな事を忘れる生活に戻った。
僕は遂に大人というものになったらしい。今では普通に生活を営み、不自由はしない生活を満喫していた。暫く幼少期に過ごしていた住処を離れて心機一転都会で生活をしているわけだが、その幼少期に過ごしていた家を訪ねるきっかけがあった。ここでは酸いも甘いも経験し僕という人間を作った場所である。そんな住処に帰宅する日がまた来たのである。ベッドや家具が当時のまま残っている。そこで日記を発見した。他愛もない話を綴ったものであった。浸る感情を他所にやることがあるので暫く作業に集中した。夜、窓から見える閃光に目を引いた。そうだ。この街は年に1回星が降る日がある。今日がその1回であるのだったようだ。そんな物珍しい物を見に外へ駆け出した。それは空から降っており地面に着地した。少しノスタルジックな気持ちを覚えた。僕の他には誰か居るような場所でもないにも拘らずそこには一人の黒い髪の少年が居た。声を掛けようにも追いつく気配がない。それでも何故か惹き込まれる様な衣をまとった少年に目が離せないでいた。どこか懐かしい気持ちがする。
目が覚めた。母親の声が聞こえる。
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