第11話 初回授業2
簡単な自己紹介が終わり、いよいよ授業に入っていく。魔法について学んだ期間は皆の方が長いだろうに、何故俺が偉そうに教えるということになっているのだろうかと、考えても仕方のないことが浮かんでくるが、その点は神様のせいにして流すことにする。何にせよ、教えることになった以上、俺に出来る精一杯で教えるだけなのだ。
「さて、まずは魔法についてな。そも、魔法というのは魔力という森羅万象が持つエネルギーを使って一定の現象を起こすことを指す。例えば【魔弾】なら魔力の弾を生成し発射する、のようにだ」
ここら辺は基礎中の基礎。皆もうんうんと頷いている。
「この現象の具現化をするには3つの方法があるわけだが……」
「「「は??」」」
ん? 何か問題があっただろうか。クラスの皆がハテナを浮かべている。浮かべていないのはサーリャだが彼女は代わりに少し怪訝な顔をしている。まるで、「何故お前がそんなことを知っているのか」と言わんばかりに。ちょっと俺の知識さん常識的な面で信用ならないからなー。早速やっちまったかなー。
「ま、待ってくれ先生! 現象の具現化方法は詠唱と魔法陣の2つじゃないのか!?」
代表してレオンが声を上げると、皆「そうだそうだ」と口々に同調する。
「あー、そうだな。確かに、詠唱や魔法陣は現象の具現化の方法だ。詠唱は現代語で、魔法陣は魔法言語で現象を固定化して、魔力を注ぐことで具現化している。だが、他にも魔法発動の方法はあるぞ?」
詠唱とは、【魔弾】の「撃ち貫け 魔力の弾よ」のように、言葉を発することで魔法の効果を決めて発動する方法である。一方で魔法陣とは、魔法の効果を決める陣をさまざまな方法で描き、陣に魔力を流すことで魔法を発動する方法だ。
「知っての通り、詠唱、魔法陣のそれぞれに長所と短所がある。詠唱は慣れれば短縮詠唱と言って、より短く簡単な詠唱で魔法を発動できるが、声を封じられれば発動不可能だ。魔法陣は、予め設置しておく罠のような使い方ができるが、陣そのものを消される可能性がある。そして双方に言えるのが慣れた魔法使いなら詠唱や魔法陣を聞いたり見たりして発動する魔法がわかってしまうことだな」
「そんなことは知っておりますわ! まさか、その欠点のない発動方法があるなんておっしゃるのではないでしょうね?」
ダリアが感情的に聞いてくる。そうか、皆は
だが俺は知っている。詠唱も、魔法陣も必要としない魔法の発動方法を。まあエルフすら超える神の知識チートでだけどな。
「ああ、あるぞ。まず魔法の完成形を強くイメージする。そしてその通りになるように魔力を巧みに操作する。これで詠唱も魔法陣もなく魔法が発動可能だ」
「イメージと……」
「魔力操作……?」
「そうだな、例えばこういうのは想像しやすいだろ?」
そう言って俺は氷で剣を創造する。スラリとした細身の剣だ。名付けるなら「薄氷の剣」かな。
薄氷の剣を見た皆が「えっ」と声を上げる。おや、そういえば生徒たちに氷魔法を見せるのは初めてだっけ。今日は少々刺激の多い授業になってしまったかもしれない。初回なのに。
「先生、それは……?」
「これは名付けて薄氷の剣という魔法だ。水魔法で出した水を火魔法で凍らせて剣の形にしてみた。これならイメージが簡単だろ?」
「火魔法で凍らせる……とは?」
あー、やっぱそこからかー。
「火魔法はな、物質の温度や状態の変化を司る属性なんだ。固体、液体、気体、プラズマとな。んで、液体の水を固体にしたのが氷ってわけさ」
「火魔法……火を生むだけじゃない……?」
今度はサーリャでさえ困惑顔である。いや、つまらなさそうな顔よりは良いので結構結構。
「そうだ。冷やすのも実は火属性なんだぞー。さて、こうやって詠唱も魔法陣も不要な魔法発動方法があるのがわかったか? だから発動方法は3つってことさ」
「先生、3つ目の方法に欠点はないのですか?」
当然の疑問だな。授業をしっかり聞いている証拠だ。当然……
「あるぞ。イメージが確固たるものでないとダメなのと、魔力の操作がシビアってとこだな。イメージと魔力操作、どちらもしっかりしてないと発動しないから、かなり慣れが必要だと思うぞ」
「逆に言えばそれだけ?」
「できたら無敵じゃん」
できたら……な。
「もちろん教えてくださりますよね?」
「ああ。だが今日はもう時間みたいだ。また今度な」
見ると、時計の針は9時30分を指していた。授業の終わりの時間だ。
ふう、なんとかなったー。どうにか皆を驚かせることができたのではなかろうか。
「では授業を終わる。起立。気をつけ、礼」
こうして俺のこの世界初の授業は終わったのだった。
非常勤講師ティーチの魔法学概論〜知識と経験を神の手違いで授けられた教師が授業を行った結果、生徒たちも無双します〜 囲魔 美蕾 @p4stn0wfuture
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