第10話 初回授業
いよいよ授業初日。少しばかりの緊張と、昂りが両立した不思議な感覚を味わっている。この感覚、前世で退職して以来だなあ。久しぶりの感覚に胸が踊る。知識は神様に詰め込まれたし、授業の内容も考えてきた。あとは生徒たちに上手くハマればいいんだけど……。
授業に行こうとすると、校長に声をかけられる。
「おはよう、ティーチ先生。今日からよろしくね。特進クラスの子たちはきっと一癖も二癖もあると思うけど、頼むよ」
「おはようございます。はい、頑張ります」
……ま、何とかするさ。
昨日の下見の甲斐あって迷うことなく教室に来ることができた。いやー、1時間目なのに欠席どころか遅刻者すらいないとは、流石特進クラスだねぇ。
「よし、じゃあ授業始めようか。起立、気をつけ、礼」
「よろしくお願いします」
1年特進クラスは10名。ジニアースの1年生全体の人数が200名、受験倍率が10倍と聞いているので同い年の中でも上澄みも上澄みなんだろう。自信に満ち溢れた表情をしている者や、なんで授業なんて受けないといけないのかとつまらなさそうにしている者もいる。ふ、その表情、いつまで続けていられるかな?
「んじゃ、まずは自己紹介でもしてくれ。俺は皆のことほとんど何も知らないからな。そうだな、名前、得意な魔法、魔法使いとしての目標辺りは最低限言ってもらおうかな」
うん、実はさっき初めて名簿見たから名前すら危うい! レオンのことくらいしか実際わからんぞ。
「んじゃ、俺からだ! 先生、久しぶりだな! 改めて、レオン・スペードだ! 得意なのは火の攻撃系魔法【
まずはレオン。魔法使いだが、接近戦もこなせる万能タイプ。目標は簡潔でわかりやすいな。しっかり育ててやらないと。
「ほいじゃ、右回りに頼むわ」
「アダマス公爵家の次女、ダリア・アダマスですわ! 得意魔法は地属性の【
ほう、ダリアはスキル持ちなのか。スキルというのは先天的に与えられた特殊な力(ということになっているが実際は後天的に取得できる)で、鑑定ならば物の価値や真贋を見定めることができるという。商会を取り仕切るアダマス公爵家にぴったりだな。
「オリヴィエ・ハートフィリアです。得意とするのは水属性の【
こちらも4大公爵家、ハートフィリア家のご令嬢。【癒しの水】は、飲むことで体力や傷を回復したり毒、呪いを治療することができる水を出す魔法だ。使用者の腕によって効力と出せる水の量が全然違うから、もっと大勢を、というのはそういうことだろう。
「エルヴィン・フォークラブだ。得意魔法は風属性の【
4大公爵家最後はエルヴィンか。ふむ、目標がはっきりしていてよろしい。【大気斬】は風属性の中ではありふれた魔法だが、それを得意に選んでくるとは、よほど自信があるらしいな。はい、次。
「サーリャ。エルフ。得意魔法は4属性の弾と壁。目標は特にない」
始まる前からつまんなそうにしてたのはサーリャだ。エルフは魔法得意なイメージがあるが実際得意らしい。4属性の攻めと守りの魔法使えるんだな。そりゃ普通にしてりゃつまらんわ。だがこちらには神の知識がある。絶対に楽しませてやるぞ。
「私はゼラ。竜人よ。今は人の姿をしているけど、人化のスキルのおかげね。得意魔法は【
へえ! 竜人までいるのか! 竜人は竜と人の二つの姿を持つ者のことだ。【竜の息吹】があれば他の攻撃魔法が霞んでしまうほどの魔法だが、人状態で使うととても燃費が悪いらしい。場合によっては他の魔法も鍛えた方がいいかもな。
「えっと、アリス・ステリアです。得意な魔法は……特にない、です。目標、目標、えーと、普通に魔法を使えるようになったらなって。よろしくお願いします」
?? 特進クラスにいる時点で周りよりは魔法がよく使えるはずだが……。ステリア家は子爵家か。何か事情があるのかもしれないな。
「僕はアレンです。得意な魔法は【
【魔法爆弾】は無属性の攻撃魔法だ。広範囲を巻き込む魔法で扱いが難しいはず。それをわかって言っているのであれば良いんだけどな。
「ザックだ。ふむ、俺の得意な魔法か? 仕方ない、特別に教えてやろう。ふっ、聞いて驚け、【
よくわからん……。【魔弾】は魔法使いが一番最初に学ぶ魔法らしい。普通、属性変換ができるようになると属性弾になるのだ。それを【魔弾】のまま使っているとはな。ある意味では楽しみだ。だがやっぱりよくわからん。
「最後はあたしだね。あたしはミア。猫の獣人さ。放出系の魔法は使えないんだけど、【
獣人は放出系の魔法が苦手な傾向にあるという知識は持っていたが本当にそうなんだな。だがその分【身体能力強化】は強力そうだ。これはこれで育てるのが楽しみである。
「よし、自己紹介ありがとう。始業式でも言ったが俺はマーリン・ティーチ。この魔法学概論1の担当だ。よろしくな。さて、今回の授業だが、最初ということで、魔法とその発動方法の基本からやっていこうと思う」
初っ端から驚くなよ?
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