第20話 「松竹梅文様 三つの願い」
「松竹梅文様に込めたのは、寒さを超えて咲く、幸せと強さへの願い。」 🎍
新年の朝。
山あいの村は、一面の白銀に包まれていた。
澄んだ空気の中、凛と立つ松。
真っ直ぐに空へ伸びる竹。
雪の中で、紅く咲いた梅の花。
その三つをかたどった松竹梅文様が、村のあちこちに飾られている。
今年も、村人たちは小さな神社に集まっていた。
「よいしょ、よいしょ!」
まだ小さなハルとミオの兄妹も、
お揃いの晴れ着を着て、拝殿へ向かう。
二人が持っているのは、白い絵馬。
そこには、それぞれが思い思いに願いを書き込んでいた。
「僕の願いは、強くなりたい!」
ハルは、きっぱりと宣言した。
「竹みたいに、まっすぐ、しなやかに!」
ミオは、少し恥ずかしそうに笑いながら続ける。
「わたしは、お友達をたくさん作りたいな。」
「梅の花みたいに、寒くても咲くんだね。」
二人は顔を見合わせて笑った。
◇
手を合わせるとき、
隣に立つ父がそっと教えてくれた。
「松は、長く生きる強さを。
竹は、折れずに伸びるしなやかさを。
梅は、寒さに負けずに花を咲かせる勇気を。
三つ合わせて、松竹梅。
幸せを願う形なんだ。」
ハルもミオも、真剣に頷いた。
◇
絵馬を掛け終えた帰り道、
二人は雪の中を駆け出した。
吐く息は白く、空へ舞い上がる。
その背中を、父と母が静かに見守っていた。
――どうかこの子たちが、
どんな冬を迎えても、
まっすぐに、しなやかに、笑顔で咲き続けられますように。
新しい年の光が、
松竹梅の飾りをきらきらと照らしていた。🎍
📖【この話に登場した文様】
■ 松竹梅文様(しょうちくばいもんよう)
由来:松、竹、梅を合わせた縁起の良い組み合わせ
意味:長寿、繁栄、逆境に咲く力、三つの幸運の象徴
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