第20話 「松竹梅文様 三つの願い」

「松竹梅文様に込めたのは、寒さを超えて咲く、幸せと強さへの願い。」 🎍


新年の朝。

山あいの村は、一面の白銀に包まれていた。


澄んだ空気の中、凛と立つ松。

真っ直ぐに空へ伸びる竹。

雪の中で、紅く咲いた梅の花。


その三つをかたどった松竹梅文様が、村のあちこちに飾られている。


今年も、村人たちは小さな神社に集まっていた。


「よいしょ、よいしょ!」


まだ小さなハルとミオの兄妹も、

お揃いの晴れ着を着て、拝殿へ向かう。


二人が持っているのは、白い絵馬。


そこには、それぞれが思い思いに願いを書き込んでいた。


「僕の願いは、強くなりたい!」


ハルは、きっぱりと宣言した。


「竹みたいに、まっすぐ、しなやかに!」


ミオは、少し恥ずかしそうに笑いながら続ける。


「わたしは、お友達をたくさん作りたいな。」


「梅の花みたいに、寒くても咲くんだね。」


二人は顔を見合わせて笑った。



手を合わせるとき、

隣に立つ父がそっと教えてくれた。


「松は、長く生きる強さを。

竹は、折れずに伸びるしなやかさを。

梅は、寒さに負けずに花を咲かせる勇気を。

三つ合わせて、松竹梅。

幸せを願う形なんだ。」


ハルもミオも、真剣に頷いた。



絵馬を掛け終えた帰り道、

二人は雪の中を駆け出した。


吐く息は白く、空へ舞い上がる。


その背中を、父と母が静かに見守っていた。


――どうかこの子たちが、

どんな冬を迎えても、

まっすぐに、しなやかに、笑顔で咲き続けられますように。


新しい年の光が、

松竹梅の飾りをきらきらと照らしていた。🎍


📖【この話に登場した文様】

■ 松竹梅文様(しょうちくばいもんよう)


由来:松、竹、梅を合わせた縁起の良い組み合わせ


意味:長寿、繁栄、逆境に咲く力、三つの幸運の象徴


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