第8話 不思議そうに見つめながら

 寮の中にある大浴場でミコトにグシャグシャと雑に髪を洗われているライア。目に泡が入りそうになり顔を左右に勢い良よく振る

「ライア、動かないで」

 注意されて、ぎゅっと目を強く閉じる。ミコトがライアにバシャと勢いよく水をかけ泡を流した

「はい、終わり」

 何度かライアの体についた泡を洗い流すと、先に湯船に浸かっていたシアの所へ転ばないようにゆっくりと歩く

「気をつけてね」

 シアが湯船の中で見守る中、そーっと湯船に入り、大きく息を吸い、ゆっくりと長く息を吐いた

「ちゃんと肩まで浸からないと風邪引くよ」

 ライアに声をかけながらミコトも湯船に入りシアの隣に座ると、シアがクスクスと笑った

「意外だね、しばらく面倒みるの?」

「うん、私が一番最初にライアを見たからね。ちょっと最初の頃の、シアのマネをしかたったし」

「私はもうちょっと優しく体を洗ってあげたでしょ?」

「そうだっけ?」

 ミコトがそう返事をすると、シアがミコトの顔にバシャと水をかける。仕返しにとミコトもシアに水をかけ、二人が楽しそうに遊ぶ様子をライアが不思議そうに見ている



「ところで、ミコトはどうなの?何か思い出した?」

 水をかけ合うのに飽きたシアがミコトに問いかけると、ライアの様子を見ながら湯船の縁に頭を置いて少し顔を横に振った

「全く。もう諦めちゃった」

「でもカメリア先生は思い出せって言っているから頑張らないと」

「そんなこと言われてもねー」

 はぁ。とため息つきながら天井を見上げると、外からザァと雨が降る音が聞こえて、ミコトとシアが換気用の小窓を見た

「雨がすごいね。すぐ帰ってきて良かった」

「術で消しちゃえば濡れないのに」

「そういうわけにはいかないでしょ?」

 ミコトの言葉に呆れながら返事をするシア。ライアは二人の会話を聞きながら雨粒が見える小窓を見ていた

「術で消す……」

 ポツリと呟いたライアの言葉は二人に聞こえていないのかまだ楽しそうに二人で会話をしている。そのままボーッと小窓を見ていると、シアとの話を終えたミコトが一人ぼっちでいるライアに気づいて、背後からバシャと水をかけた。急な出来事に驚いたライアがかけられた方に振り向くと反応を見て笑うミコトと呆れた顔で湯船から上がるシアがいた。二人を見て戸惑っていると、ミコトがライアの腕をつかんで軽く引っ張った

「ライア、そろそろご飯が出来ているだろうし、そろそろ上がろっか。ねっ」

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