第37話王都での忙しい1日

僕は研究室にのドアをノックした。

「あのー、クック・フレリアンです。」

「はーい。ちょっと待っててくださーい。」

と返ってきたと思ったら、中からバタバタと音がする。

これ、研究室散らかってるタイプの科学者でしょ。

そりゃ、ナカド学術学園の科学者となれば資料とか論文の量はかなり多いんだろうけど。

ここには普段学生も来るんでしょ。

だったら片付けておかないと色々不便だと思うんだけど。

かれこれ10分くらい待ったと思う。

やっとビネガー教授が出てきた。

「いやあ、すみません。ちょっと散らかっていたもので。」

「全然大丈夫ですよ。」

「とりあえず中に入ってください。」

ビネガー教授の研究室の中はいろんな資料や論文で溢れていた。

片付けたって聞いたけど、正直まだ汚かった。

この部屋の中でどこに何があるのか把握するのってすごく大変な気がする。

教授は椅子を出してきて僕たちに座るように促した。

「飲み物は何がいいですか?と言ってもコーヒーとお茶くらいしかありませんが。」

僕とアリスはお茶をウラギはコーヒーを頼んだ。

科学者が飲むコーヒーってすごい苦いイメージがある。

正直、コーヒーは砂糖とミルクを少し入れるくらいがちょうどいいからビネガー教授のコーヒーはあまり得意じゃない気がしたのだ。

ビネガー教授は飲み物を持ってくるとすぐに話し始めた。

「本日は、ナカド学術学園に来るかどうかの話ということでいいですか?」

「はい。その件についてですが、よろしくお願いします。」

「おお、本当ですか。それは良かった。では早速手続きを済ませてしまいましょう。まずは、入学届ですね。」

ここでは教授の場合でも入学届と言うらしい。

と言っても、名前と研究分野を書くだけだ。

「できました。」

「それではこれからの流れを説明しますね。」

「お願いします。」

「まず、ここに教授として入学するためにはそれなりの実績が必要です。そこでクックさんには洞窟病に関する新たな仮説の論文を入学届と共に提出していただきます。審査があるので1週間ほど結果を待っていただきます。」

審査があるのか。

まあ、そりゃそうだよな。

でも、それなら普通に落ちる可能性もあるのか。

「審査に落ちる可能性もあるのでは?」

「それは考えづらいですね。私自身、ダンジョンに関することについての研究ではそれなりに実績がありますが、その私でもあのような仮説は今まで考えつきませんでしたから。」

すごいんだかすごくないんだかわからなくなってきた。

「しかし、僕は料理の研究をしたいのに提出する論文はダンジョンのことでいいんですか?」

「それについてはダンジョンで言っていたように料理の研究をしている中で見つけた仮説だと説明すれば問題ないでしょう。」

「わかりました。それでは後日、論文を書いて持ってきます。」

「入学届と論文は受付で入学希望だと言えば受理されるので、何か他に用事がなければ中に入ってくる必要はありませんよ。」

「わかりました。ありがとうございました。」

「ありがとーございました。」

アリスが僕に続いてお礼を言った。

今日は起きてたんだ。

それに起きててもちゃんと大人しくしてる。

アリスもどんどん成長してて嬉しい。

学術学園を出ると今度はリベンジ商会に向かった。

本当に今日は忙しいな。

「リベンジ商会ではウラギのお父さんに挨拶するだけでいいの?」

「いや、多分商品のことも話すと思うぜ。」

「どのくらい?」

「今は回復薬の仕入れの話くらいじゃねえか?米のことはもう決まってるし。」

「わかった。」

そういえば回復薬を売ることになってたんだ。

米のことですっかり忘れていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リベンジ商会につくと職員に出迎えられた。

流石に次期社長の客人となるとこのくらいするのか。

「おかえりなさいませ。ウラギ様。」

使用人のような人がウラギに声をかけた。

「ああ、こいつが前に言ったクック・フレリアンだ。客室に連れてってくれ。」

「承知しました。」

僕たちはその職員に客室まで案内された。

「ここで少しお待ちください。」

そこには大きな机と椅子があり、お菓子も準備されていた。

アリスはとても食べたそうだ。

「アリス、食べてもいいけど汚さないでね。」

「はい。わかりました。」

そしてポロポロこぼしながら食べる。

汚すなって言ったのに。

ここら辺はアリスにもうちょっと頑張ってもらわないと。

「アリス。誰も取らないからもっと落ち着いて食べて。」

「はひ。」

口いっぱいにお菓子を詰め込んで返事をされても全然信用できないんだけど。

でも、アリスは少しゆっくり食べるようになった。

相変わらずこぼすけど。

こぼさずに食べることはそんなに難しいのだろうか。

「アリスってこぼさないように食べられる?」

「はひ。」

「じゃあ、やってみて。」

やっぱりこぼした。

「できいなひでふ。」

「まず、口に物を入れて話すのをやめようか。」

今度はアリスはしっかり飲み込んでから答えた。

「はい。」

「こぼすのはお行儀が悪からやめて欲しいんだけど、難しいかな?」

「できます。」

やる気は十分だ。

やる気に比例して覚えてくれると助かるんだけど。

「まず、口いっぱいに物を詰め込むのはダメ。」

「はい。」

ちょっと不満そう。

「で、ゆっくり噛む。」

「はい。」

「お菓子を持つのは片手にして空いてる手は口元に添える。」

「片手ですか?」

「そう。両手に持ってるとなんか卑しいよ。」

「わかりました。」

また少し不満そう。

まあ、こうやって一つずつ覚えていこう。

僕の言う通りにやってみると少しマシになった。

「できました。」

嬉しそうだ。

まだ少しこばすけど、この調子で上手に食べられるようになっていこう。

コンコン。

ドアが鳴った。

「入るぞー。」

ウラギの声だ。

「はーい。」

これからリベンジ紹介の会長との初対面だ。

凄腕の商人だから気を付けないといけないけど。

でもきっと、色々吸収できるだろうから楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る