第36話料理研究家になろうと思います。
スキニー公爵邸でのパーティーから一夜が明けた。
僕たちは馬車でナカド学術学園に向かっていた。
要件はもちろんナカド学術学園に研究者として席を用意してもらうことについてだ。
正直すごく魅力的だ。
ちなみにアリスは寝てる。
馬車嫌いが治らないからこうするしかないのだ。
でもこいつ本当にいつも寝てるな。
研究者という称号は将来店を出すことを考えてもとても便利だ。
専門家とか、研究者っていうレッテルは消費者やお客さんに対する大きな説得力となる。
消費者心理としてはその道のプロが関わっているというのはそれだけで価値がある。
化粧品とか健康食品とかは結局ただのプラシーボ効果でしかないものだとしてもメンタル的に余裕ができるから結果として精神衛生の面から健康になることもある。
それが商品の効果だと思う人が出ればそういうことが連鎖する。
これってよく考えられてるよね。
そういえばこの世界にはそういう商品宣伝はあるのだろうか。
「ねえ、ウラギ。商品の宣伝って普段どうしてるの?」
「急にどうしたんだ?」
「ちょっと気になったんだよ。庶民向けの商業戦略って、将来僕が店を出したらその時に役に立つかもしれないじゃん。」
「まあ、それは確かに。でも別に特別なことはしてないぜ。庶民向けに他より安く売ったらリベンジ商会は庶民の味方だって思い込んだようなヤツらがいたんだよ。そいつらがリベンジ商会を褒めまくって名前を広めてくれたんだ。」
「なるほどね。ありがとう。」
庶民に対しても誠実な態度をとったことによって庶民の意思を味方につけることができたのか。
こういう実績は勝手に広まるし、そういうのは下手な宣伝より効果的だろう。
今の所僕は米の美味しい作り方を見つけたという実績は持っている。
スキニー公爵にも認められたということもそのうち広まるだろう。
そうすれば僕の名前もそこそこ知れ渡る。
そんな中でナカド学術学園に研究者として入学したとなったら話題性は十分だ。
ナカド学術学園に入ることには他にもメリットがある。
前にサド洞窟会った調査員が言っていたが、研究のためなら旅に出ることも許される。
アリスは助手として付き添わせれば多分問題ない。
でも、公爵の誘いを断ったのに学術学園には入学するというのは公爵に対して失礼なんじゃないかな。
怒りを買ったらどうしよう。
まあ、そういう人には見えなかったけど。
「ねえウラギ、もし僕がナカド学術学園に入学したら公爵に対して失礼になると思う?」
「大丈夫だ。お前が学術学園から勧誘されてることを公爵に言ったら公爵は感心してたぞ。」
「そっか。なら大丈夫だね。」
良かった。
これで心置きなく入学できる。
てか、ウラギはなんでそんな簡単に人のことを話すんだよ。
そん感じで僕はちょっとモヤモヤしながら学術学園に向かった。
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学園に着いた。
王城かってくらい大きかった。
あの図書館が含まれてないのにこの大きさとは、流石世界最高の学園だ。
驚いたのは、制服があるということだ。
制服って言っても見た目はどちらかというとスーツみたいな感じだけど。
この世界にもそういう概念があるんだね。
教授らしき人は皆白衣を着ている。
これは研究者って感じがしていいね。
雰囲気は前世の大学に近いのかも。
まあ、僕は大学入学前に死んだから詳しいことはわからないけど。
早速受付に向かった。
建物に入ると正面に受付があり、左右には前年にこの学園の教授や生徒から発表された研究論文がある。
前年の分だけでこの量は流石だ。
受付のすぐ横には階段と奥へ続く通路。
これが学校とはなかなか信じられなかった。
すごすぎる。
「おいクック。さっさと受付しようぜ。」
僕が圧倒されていると、見かねたウラギが急かしてきた。
「あっ、うん。そうだね。」
「こんにちは、本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付嬢は美人で賢そうな人だった。
やっぱり世界最高峰の学園は受付嬢も頭がいいのかな。
「どうも。僕はクック・フレリアン申します。サド洞窟の件でこの学園のビネガー教授に用事があるのですが。」
ビネガー教授。
あの時の調査員集団の責任者だった人だ。
普段はダンジョンの生態系について研究しているらしい。
その分野では世界でも認められているすごい人だったらしい。
「フレリアン様ですね。お話はビネガー教授から伺っております。それでは私がご案内いたしますのでついてきてください。」
「わかりました。」
「お話を聞く限り、フレリアン様は聡明な方のようで。ビネガー教授があれほど人を褒めるなんて珍しいことですよ。」
「はは、ありがとうございます。」
この人、人をおだてるのが上手い。
こういう人には気を付けておかないと、マルチとか、ハニトラとか。
この世界にもそういうものがあるのかは知らないが、そういうので簡単にどん底に落ちることだってあるからね。
まあ、この人は学術学園の受付嬢だし大丈夫だとは思うけど。
「そういえば、そこの女性は魔獣ですか?随分とおとなしいですが。」
「はい。魔獣なんですけど、一緒に旅をしているんです。普段はもっと元気なんですけど、馬車が苦手なようで今は大人しくなってるんです。」
「そうだったのですね。ですが、魔獣を使役されるなんてフレリアン様はお強いんですね。」
「いえ、そういうわけではなくて、前に助けたから恩義を感じてるらしいです。」
「魔獣を助けるなんてとてもお優しいのですね。」
「ありがとうございます。」
こんなやりとりをしているうちにビネガー教授の研究室に着いた。
「ここがビネガー教授の研究室です。」
「ありがとうございました。」
受付嬢が去るとウラギが話しかけてきた。
「なあ、さっきの受付嬢すげえ美人だったな。スタイルもいいしちょー可愛かった。お前もそう思うだろ。」
なんだよ。
そういうのは今じゃなくていいだろ。
「そうだね。でも、今はビネガー教授のことに集中しよう。」
「連れねえな。」
ちょっと呆れた。
結局、男なんてそんなもんか。
でも、気持ちを切り替える。
僕はビネガー教授の研究室のドアをノックした。
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