第7章第一次王都訪問
第31話初めての王都
僕たちは王都に到着した。
やはり王都というだけあって人が多いし活気もある。
今まで見たどの街よりも発展していた。
ここ王都ヨートキはジャポネー王国の中でも面積、人口ともに最大で学術国家らしく学校もたくさんある。
位の高い貴族もいるし、街の人たちも品があるように見える。
本当ならゆっくり見て回りたいんだけど、今回は用事がある。
パッツパツ・スキニー公爵にお目通りして、ナカド学術学園のことを考えて、リベンジ商会に行って会長、つまりウラギの父親に会って、自由時間ができるのはこれらが片付いてからだ。
「よし、まずはスキニー公爵に会いに行くぞ。だが、その前にお前らにそれに相応しい服を着てもらわねえとな。」
確かにウラギの言う通りだ。
僕は調理服だし、アリスに関しては冬用の上着。
とても貴族に会いに行く格好には見えない。
「確かに服を着替えなきゃだね。でも、僕こういうの初めてだからどういう服を着ればいいのかわからないや。」
「そこは任せておけ。俺が見繕ってやる。」
なるほど。
リベンジ商会のものなら安心だ。
なんたって、庶民におしゃれ文化を広めた商会だし。
服選びのセンスはそこら辺の人たちよりずっと信頼できる。
「本当に?ありがとう。ウラギが選んでくれるなら安心だ。」
「褒めてもらえるのは嬉しいが、俺、アリスをどうするべきかわかんねえんだよな。」
そうだ。
僕たちにはアリスがいる。
お目通りにはウラギもついてくるからアリスを外で待たせるのなら1人にさせることになる。
それは心配だ。
変なのに絡まれて怒って殺した、なんてことになったら大問題だ。
何より1人で待たせるのは可哀想だし。
リベンジ商会に預けるという手もあるが、長時間アリスを放っておくとアリスが我慢できなくなる可能性が高い。
連れていくしかない。
だが、貴族に会うときのマナーなんてアリスは全く知らないだろう。
それに、魔獣を連れてお目通りなんてそれだけで公爵からの印象が悪くなる可能性もある。
まあ、おとなしくするように言いつけて、スキニー公爵が魔獣に寛容であることを祈るしかないか。
まあ、アリスはもう簡単に人に喧嘩を吹っ掛けたりしなくなったし、我慢も少しはできるようになったからきっと大丈夫。
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僕たちはリベンジ商会の傘下にある服屋で服を選んでもらっている。
この世界にもスーツのようなものがあるらしく僕は黒いスーツのようなものを選んでもらった。
アリスは薄い水色のタイトなドレス。
思ったより似合ってた。
やっぱ、普段の言動のせいで忘れているが、見た目は美人だからこういう格好も似合う。
でもやっぱり一言話せば子供っぽさ全開だ。
いわゆる残念美人って類なのかも。
僕はアリスに尻尾を振らないことと、公爵の前ではおとなしくすることを念入りに教えて公爵家へ向かった。
お願いだから言いつけを守ってね。
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僕たちは公爵家へ到着した。
まずは公爵家に顔の通っているウラギが事情を説明した。
そうやら事前に僕たちを連れてくる旨の報告はしていたようですんなり入れてもらえた。
アリスはちょっと警戒されちゃったけど、大人しくしているところを見て信頼してもらえた。
ていうか、ウラギはおそらくイガタニに僕を迎えに来る前に公爵に近いうちに僕を連れてくるって言っていたのだろう。
もし僕が行かないと言っていたらどうしたんだ。
なんとしてでも説得するつもりだったのか。
事情を説明して僕に呆れられながら連れてきたのか。
やっぱり、だいぶイカれてるな。
そういうところは嫌いじゃないけど。
準備があるということで僕たちは客間のようなところで待つことになった。
客間には高そうなお菓子が置いてあった。
アリスは目を輝かせている。
すごく食べたそう。
ドレスにこぼしそうで怖いけど、公爵の前でちゃんとおとなしくしてもらうためにも今のうちにストレスを与えるのはやめておこう。
「食べてもいいよ。ただし、こぼさないように気をつけてね。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
「尻尾振らない。」
「あっ。そうでした。」
本当に大丈夫かな。
クッキーめっちゃこぼしてるし。
「全く、アリスは行儀が悪いな。少しは俺を見習え。」
ウラギはドヤ顔でアリスを見る。
確かにウラギはマナーはしっかりしている。
でも、僕はこいつが敬語を使っているところをほとんど見たことがない。
こいつもあまり人のこと言えないんじゃないか。
それに礼儀作法でアリスにマウントを取るとかどういう神経してんだよ。
「うるはいでふ。わたひもお行儀いいのでふ。」
食べながら言っても説得力ないよ。
それにそんなに口に物を詰めるのは行儀悪いよ。
「おいおい、食べるか喋るかどっちかにしろ。」
ウラギがそう言うとアリスは黙々とお菓子を食べた。
食べる方が大事なんだね。
ウラギも呆れた様子だ。
「おいクック、アリスは本当に大丈夫なのか。」
ウラギも心配なようだ。
アリスはウラギを睨んでいる。
目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。
「きっと大丈夫だよ。アリスを信じよう。」
アリスは首を縦に振る。
首が取れそうなくらい。
食べながらそんなことしたら変なとこに入っていきそうだけど。
「おいおい、アリス落ち着けよ。そんなことしたら変なとこに入ってくぞ。」
ウラギも心配してくれている。
なんやかんやウラギは面倒見がいい。
どっちかというと仕事ばっかで家族にあまり構わないタイプだと思っていたけど、意外と家族を優先するのかも。
意外って言ったら失礼か。
そうこうしていたら僕たちは呼び出された。
ついにお目通りだ。
僕はアリスのドレスについた食べカスを払いながら最後の注意をした。
「いいね?何度も言うけど、公爵の前ではお行儀よく大人しくしてるんだよ。」
「わかりました。任せてください。」
本当に頼んだよ。
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