第29話ダンジョンボス

ダンジョンボス。

それはダンジョンの最深部にあるコアルームという部屋に沸く魔獣のことだ。

コアルームにはダンジョンの核がありコアを破壊することでダンジョンは消滅する。

冒険者ギルドはダンジョンのコアを破壊せずに定期的に調査をし、ダンジョンを管理している。

まあ、ダンジョンってのは長い時間をかけて自然に生成されるものだからあまりにも数が多くなったら破壊するんだけど。

そして、僕たちは今コアルームに入ろうとしている。

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「ここがコアルームです。俺の合図で一斉に侵入します。気を引き締めてくださいね。」

ダニエルが先頭に立って身構える。

「なんか暑いな。もしかしたら火魔法を使う魔獣かもしれねえ。クック水魔法と土魔法の準備をしといてくれ。」

「了解。」

「我々も自分の身を守るくらいの魔法は準備しておこう。何もしないよりマシだろう。」

「それでは、行きます!」

ダニエルの合図で全員コアルームに突入した。

そこにいたのはフレアゲータだった。

Bランク相当の魔獣で強力な火魔法と筋肉の詰まった尻尾での攻撃が特徴的だ。

また、皮膚が厚いため簡単な物理攻撃ではダメージを与えられない。

厄介な相手だ。

まあ、僕は調査員の2人を守ってるからダニエルとウラギで頑張って倒してね。

「これはフレアゲータですか。想像以上の強敵ですね。このダンジョンの異変の原因はあれで間違いないでしょう。」

調査員の人は冷静に分析してるように見えるけどめちゃくちゃ腰が引けている。

すごくカッコ悪いことになっているが、しょうがないか。

フレアゲータなんて冒険者とか騎士じゃないと対応できないような魔獣だし、一般調査員にとっては相当な恐怖なのだろう。

でも、フレアゲータには弱点がある。

昔、修行の一環として1人でこっそりダンジョンに潜ったことがある。

その時にフレアゲータは討伐済みだ。

前世のワニと同じように、口を開く力が弱いから口から火魔法を出そうとしたときに塞いでしまえば体内が爆発して虫の息だ。

でも、この世界の人たちはいざ戦闘になった時に頭を使えない。

目の前の敵に集中するのはいいことだが、思考を止めてはダメだ。

僕はサポートとしてここにいるわけだしいざとなったら誘導しよう。

ウラギとダニエルの戦いぶりは見事だった。

尻尾の攻撃は飛んだり屈んだりして簡単に避けるし、火魔法も魔法で防御していた。

そういえば、ウラギは火、水、土、闇の魔法が使える。

ダニエルは水、風、氷、光の4属性の適性がある。

結構熱い男って感じだけど、魔法の適性はクールな感じ。

なんか、かっこいいな。

別に羨ましいわけじゃない。

魔法に関しては困っちゃうくらい恵まれてるからね。

もしかしたらちゃんと説明してなかったかもしれないけど僕の魔法適性は言うまでもなく全属性。

ちなみに、他の人には火、水、風、土、治癒の5属性って言ってる。

これでも結構騒がれるんだけよね。

治癒魔法使いって、他と比べてちょっと少ないから。

でも、咄嗟に治癒魔法を使わなきゃいけないことがあるかもしれないから治癒魔法は使えるって言っておくほうがいいんだよね。

で、ボス討伐の方は予想通りなかなか有効打が入らない。

そうなんだよな。

これがフレアゲータの面倒なところ。

僕も最初は苦労した。

物理で攻めるんだったら、重い岩を上から落とすとかそのくらいしないといけないけど、それには結構魔素を消費するし、ちゃんと狙うために止まらないといけないかもしれないから、難しい。

だから火魔法を出すタイミングで口を塞ぐのが1番いい。

僕は試したことないけど、毒とかも有効なのかもね。

焦ったいから2人にヒントを出そう。

僕は、フレアゲーが火魔法を出そうとしたタイミングで、口に土の塊を落とした。

そしたら、フレアゲータの口は一瞬閉じて火魔法のコントロールが大きくずれた。

きっとウラギとダニエルならこれを見逃さないだろう。

「今のは?そうか、おいダニエルあいつは口を開く力が弱え。火魔法を出すタイミングで口を塞ぐぞ。」

「わかった。俺が囮になる。ウラギは口を塞いでくれ。クックさんは俺の防御を手伝ってくれ。」

いいね。

よく気づいた。

「わかりました。」

僕がそう答えるとダニエルは笑った。

足を止めて、防御の体制をとる。

もしかして、囮になるってそんなに堂々と的になるってこと?

イカれてるね。

でも、これくらいじゃないと冒険者なんてやってられないんだろうな。

ダニエルは氷魔法で自分の周りに壁を作る。

僕はかなり厚めに水の壁を作った。

土魔法の準備もできている。

こういうとき、土で壁を作るのは危険だ。

前が見えなくなるからね。

ここら辺の判断を間違えないのはさすがだ。

フレアゲータはダニエルに向かって火魔法を放とうとする。

ウラギは土魔法で巨大な岩を作ってフレアゲータの口の上にセットしている。

なるほど、ジャストタイミングで落とすのを狙っているのか。

僕は普通に植物魔法でツタを生やして口を固定したけど、2人は植物魔法を使えないもんね。

フレアゲータが火魔法を放とうとしたとき、ウラギは岩を落とした。

タイミング、落とす位置ともに完璧だ。

フレアゲータは一瞬大きな音とともに腹が膨らんで動かなくなった。

かわいそうだけど、結構派手に破裂したみたい。

フレアゲータの討伐を確認すると、調査員は嬉々として話しかけてきた。

「これはすごいことですよ。今回の依頼を完遂するだけでなく、フレアゲータの倒し方を発見してしまいました。すぐに報告書を作成して発表しましょう。きっと莫大な報酬が出ますよ。」

これを聞いてみんな喜んだ。

でも、僕は冒険者として名前が売れるのはあまり嬉しくないんだけどね。

それにしても煙たいな。

そのとき僕の頭にある可能性がよぎった。

「皆さん、急いで上に向かいましょう。」

「どうしたんだ、急に?」

「いいから。早く。」

わかったかもしれない。

洞窟廟が。

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