第6章ダンジョン探索のすゝめ
第26話冒険者パーティー
僕たちは魔獣と戦闘している冒険者たちの元へ向かった。
「大丈夫ですか?今加勢します。」
「おお。これはありがたい。ちょっと数が多すぎて困っていたんです。」
戦闘に参加していない人がそう言った。
じゃああんたが戦えよ、と思ったが何かの資料なのだろうか、大量の紙を抱え込んでいる。
もしかしたら何かの調査に来てて今戦っていない人たちは調査員なのかも。
魔獣自体は量こそ多いもののそんなに強い訳ではなかったのですぐに戦闘は終わった。
僕たちがいなくてもなんとかなったかも。
「ありがとうございました。」
調査員らしき人の1人がお礼を言ってきた。
「いえ、たまたま見かけて、こういう時は助け合うのが冒険者ですから。」
「それにしても、あんたたちはなんかの調査でもしてんのか?」
ウラギがそう尋ねた。
どうやらウラギもこの人たちが調査員っぽいと思っていたようだ。
「ええ、私たちはこの先にあるダンジョンで調査をしていたんです。」
「この先にあるダンジョンって確か、サド洞窟だったか?そんなに危険なのか?」
「いえ、普段は初心者の冒険者パーティーが入るようなダンジョンなのですが、最近上位の魔獣の出現が確認されて、その調査に来ていたんです。」
「そしたら、さっき見た通り大量の魔獣が出てきてここまで押し出されちまったんだ。」
さっきまで戦っていた冒険者パーティーの1人が途中から話に割って入ってきた。
「大変でしたね。」
「ああ、でも助かったよ。俺はダニエル。鋼鉄のばれいしょっていうパーティーのリーダーをしている。俺からも礼を言わせてくれ。ありがとう。」
鋼鉄のばれいしょ。
聞いたことがある。
剣士のダニエル、魔法使いのリサ、戦士のジャイアント・ジュニア、盗賊のナナの4人で構成されているパーティーでまだパーティーを結成してからそれほど長くはないが、全員がBランク冒険者の実力あるパーティーだ。
しかし、彼らでも苦戦するほどの量の魔獣が出て来たとなると只事じゃない。
「あんたらのことは知ってるぜ。その上で、鋼鉄のばれいしょが苦戦するほどの量の魔獣の出現てのは気になるな。」
ウラギもそれが気がかりのようだ。
「ええ、我々もこのようなことになるとは思っておらず、調査員を派遣しすぎてしまいました。そのせいで鋼鉄のばれいしょの皆さんにも迷惑をかけてしまいました。」
確かに、ただの魔獣の討伐と護衛では難易度が違う。
それもパーティーメンバーより多い人数の護衛となればかなり難しい。
「俺たちは別に気にしてないぜ。むしろ力不足ですまなかった。」
ダニエルは器の大きな男だった。
確かまだ21歳とかだった気がするけど、かなりしっかりしている。
「頼もしいな。ダニエルさんよ。」
ウラギはこういう時にすぐに人をおだてる。
これも商人の癖なのだろうか。
「いや、俺たちこそ助かったよ。君たちは何てパーティーなんだ?」
「ああ、俺たちはパーティーじゃないんだ。俺は商人だし、こいつは修行の旅をしてる最中で今は王都に用事があって、一緒に向かってたところだ。」
「そうなのか、かなりの実力だからてっきり冒険者として生きてる人たちだと思ったよ。」
「ハハ、そりゃ嬉しいな。だが、俺はともかくこのクックって男は冒険者としても有望だと思うぜ。」
何を言ってるんだ。
僕は冒険者として名を売るつもりはないって知ってるだろ。
「そうなのか、確かにかなり若く見えるな。クックと言ったね。修行をしてると言ったけど何の修行をしてるんだ?」
「僕は料理人になりたくて、各地を回って、色々学んでいる最中なんです。」
「料理人?勿体無いくらい強いね。」
「ハハ、ありがとうございます。」
「ねえねえ、クックって名前聞いたことあるかも。」
「なんだっけ、確か米の人じゃなかった?」
後ろの方で、リサとナナが話している。
僕の名前が知られているというのは嬉しかったが、米の人で知られてるの?
なんか農家みたい。
「米?ああ美味い食い方が見つかったらしいな。」
ジャイアント・ジュニアは見た目通り食べ物のことには興味がありそうだ。
「仲間はああ言ってるけど、そうなのか?」
「はい。僕が米の新しい食べ方を見つけたんです。」
いいね。
料理人への道を進んでる感じがしてなんだか嬉しい。
「じゃあ、隣の君は商人って言ってたけど、米の取引でもしてるのか?」
「ああ、お察しの通りだぜ。俺はリベンジ商会のウラギってんだ。」
「「リベンジ商会!?」」
女性陣の目が輝いた。
やっぱり、若い女性はリベンジ商会好きだよな。
なんかウラギに負けた気がして悔しかった。
「私はリサって言います。」
「私はナナです。ウラギさん、仲良くしてください。」
そんな露骨に媚び売るなよ。
「なあなあ、クックって言ったよな。俺も米に興味があんだ。あんたのこと応援するからちょっと食べさせてくんねえか?」
ジャイアント・ジュニアはそう言ってきた。
ありがとう。
信じていたよ、ジャイアント・ジュニア。
「あ、あの。クックさん。後ろの方は人間ではないようですが、どうしたのですか?」
調査員の1人が聞いてきた。
まあ、確かに気になるよな。
「彼女はアリスといって、マナシヤ近くの森で倒れてるのを見つけて保護したんです。僕の言うことは聞きますから、皆さんは安心してもらって大丈夫ですよ。」
「そうですか。いや、職業上助けてもらったといっても気になってしまいまして、気を悪くさせたのだとしたら、申し訳ありなせん。」
「よくわかんないですが、いいですよ。」
アリスはニコニコしている。
きっと構ってくれたのが嬉しかったのだろう。
てか、放置しててごめん。
「それで、もしよろしければ、我々に協力していただけませんか?さっきのようなことがまた起こらないとも言い切れませんので、少し不安なんです。もちろん報酬はお出しします。」
あれ?
この流れはよくない気がする。
また面倒ごとに巻き込まれてしまったかも。
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