第3章やっとこの物語にもヒロインが…

第11話従業員候補見つけました。

この世界の生態系はとにかく面倒だ。

魔族、魔獣、亜人。

前世には存在すらしていなかった3つの種族区分だ。

魔族は人型で言語を理解する。

高い魔力を有し、この世界には魔族が統治をするマジカル王国という国もある。

本島の北西に位置する。

マジカル王国はのトップは魔王と呼ばれ、魔族の中でも別格の戦闘力があると言われている。

マジカル王国は長年、人間が統治する国々と対立している。

また、魔族の寿命は150年程度だという。

次に魔獣。

形は様々だ。

ドラゴン、獅子、鳥、などなど。

さらに魔獣は人型に変身もできるらしい。

基本的に魔族に忠誠を誓っており、マジカル王国にほとんどが生息している。

ただ、知能が低い場合が多く、その分身体能力は人間からすれば桁外れなんだとか。

寿命は300年前後と言われている。

最後に亜人。

人型で、魔族や魔獣ほどの戦闘能力はないが、知能は高い。

エルフ、ドワーフ、獣人。

エルフやドワーフは大陸の最南に位置するロングイヤー王国に生息している。

エルフは精霊魔法と呼ばれる精霊によって強化された魔法を使う。

寿命は1000年以上らしい。

ドワーフは魔法はあまり使えないが、鍛治が得意だ。

寿命は500ほどだという。

獣人はその名の通り、獣と人を合わせたような見た目で、人型の変身能力がない魔獣のようなものだ。

魔獣と比べると身体能力は低いが知能が高いことが多いという。

マジカル王国の東隣にズー王国という獣人の国もある。

寿命は150年程度。

ちなみに、これらの種族は全て、魔族型魔素を使用する。

どの種族にもいつか会ってみたいし、食文化を研究してみたい。

きっと楽しいだろう。

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マナシヤに来て1週間くらいになる。

僕は相変わらず、薬草を採取していた。

ハルさんは頑張ってまいている。

薬草の採取もビックバイソンの調理法の研究もマナシヤの食文化の研究も大体いいところまできていたので、そろそろマナシヤを出ようかと考えている。

前に強そうな魔獣の痕跡見つけたけど、あれからはなんともない。

でもまだ警戒はしておこう。

お昼の時間だったので、少し拓けたところでビックバイソンのシチューを作っていると、突然獣のような匂いがした。

僕は戦闘体制に入る。

今まで嗅いだことのない匂いだったし、おそらく前の魔獣だろう。

シチューの匂いに釣られてきたのか。

こういう時パニックになって逃げ出そうとする人がいるけどそれは悪手だ。

魔獣は人間よりずっと鼻がいいから、簡単には逃げられないし、逃げたと分かれば魔獣は相手を自分より弱いと判断し、獲物だと思って襲ってくる。

だから、正面から戦って倒す方が手っ取り早いのだ。

まあ、一般人にはできないかもしれないけど。

そんなこんなで、魔獣はどんどん近づいてくる。

正面の茂みが揺れた。

くる!

姿を現したのは、真っ白な体毛にところどころ生えた黒の毛が虎模様を作っている。

丸い耳、細くて長いしっぽ。

間違いない。

白虎(はくこ)族だ。

白虎族、またの名を氷虎(ひょうこ)族。

極めて高い身体能力と強力な氷魔法、風魔法や雷魔法が得意な個体も多い。

ただ知能は魔獣の中でも低い方で、いわゆる脳筋という感じだ。

そしてその肉は、極めてまずい。

この世のものとは思えないほど臭いらしい。

流石に食材にはなら無さそうだ。

「人間、弱い、獲物、食う。」

白虎族はそんなんことを言いながら襲ってきた。

これだけで、白虎族の知能の低さがわかる。

一応能力を見ておこう。

確かに普通の人間なら出会った瞬間死を覚悟するよな戦闘能力だが、残念、僕は普通の人間ではないんだ。

何も考えずに突っ込んでくるなら話は早い。

ちょっと飛びながら後ろに下がって、左足を地面に着く。

尻餅をついたように姿勢を崩す。

「エサー。」

こんなふうに油断したところに右足で顎に蹴りを入れる。

間合いの管理をミスると死んじゃうけど、こんな簡単なこと僕はミスらない。

「ふぎゃっ!」

情けない声を出して、白虎族は気絶した。

手加減はしたんだけど、顎割れちゃったかな?

しばらくすると白虎族は目を覚ました。

「目が覚めた?」

僕が問いかけると。

「はいっ!」

また情けない声を出しながら腹を僕に向けてきた。

こういう四足歩行の魔獣が服従を示すときのポーズだ。

「殺さないでくださいぃ。」

最初の威勢はどこに行ったのか。

涙目で訴えかけてくる。

魔獣は圧倒的な力の差を感じると逆らわなくなるのだ。

「殺さないよ。君の肉おいしくないもん。」

「食べるんですかぁ?」

また泣きそうな声でそんなことを言う。

おいしくないって言ったよね。

「食べないよ。君、お腹減ってたんでしょ?これあげる。」

僕はシチューを渡した。

「ありがとうございます。」

今度はすごく元気そうに言った。

わかりやすいな。

てか、食べ方汚な。

「君、もうこの街に近づかないでね。」

「わかりました。」

顔をシチューまみれにして笑っている。

「じゃあもうどっか行っていいよ。」

そういうと、すごく寂しそうにこちらを見ている。

「どうしたの?」

「ご主人様はわたしを捨てるのですか?」

は?なんかまた面倒ごとに巻き込まれそうな感じがする。

「どう言うことかな?」

「氷虎族は自分を倒した相手に生涯の忠誠を誓うのです。」

ものすごいドヤ顔でそう答える。

いらないんだけど。

「いや、いいよ。僕そういうのは必要じゃないから。」

「わたしはいらない子なんですかぁ?」

また泣きそうな顔で聞いてくる。

断りづらくすんなよ。

でも、礼儀作法を教えれば、将来従業員として使えるかも。

魔獣を従業員にすれば、魔族にとっても入りやすい店になるかも。

「君、本当に一生の忠誠を誓える?」

「はい!」

いい返事だ。

「じゃあしばらく僕の旅についてきてよ。」

「はい!」

すごく嬉しそう。

初めて魔法を使えた子供みたい。

「君、名前は?」

「アリス・ティゲルです。ティゲル族族長の5番目の女の18番目の子供です。」

なんか急に魔獣の常識で語られても困るな。

「わかった。じゃあひとまず人型に変身してみて。」

「はい!」

そう言うとアリスは変身した。

が、いや、冷静に考えればそれが普通なんだろうけどさ、なんで裸なのかなぁ…

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