第9話能力鑑定
最近気づいたことがある。
僕は人より性欲が弱い。
前世では両親を殺すことに全てをかけていたせいで食欲、睡眠欲、性欲、この人間の3大欲求と言われるものの何よりも殺意が強かった。
食事をするよりも毒の作り方や盛り方を考え、寝るよりも両親を殺すために体を鍛え、えっちなことを考えるよりも親の死に様を考えた。
この世界に来てからはそんなに強い殺意なんて感じたことがなかったから食欲や睡眠欲は取り戻したが、性欲はまだ戻っていない。
いつか戻るのだろうか。
戻ったとして使うことはあるのだろうか。
家族を作るなんてできる気がしないし。
やっちゃいけない気がする。
そんな幸せ殺人鬼が築いていいものじゃない。
いっそこのままならいいんだ。
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今日は能力を鑑定してもらうため、朝ごはんを食べて少し休んだらギルドへ向かった。
ギルドの奥にある鑑定室に入る。
早めに来たつもりなのに結構人がいた。
ハルさんもいた。
「クックさん、お待ちしておりました。」
いつもの受付テーブルにいなくて安心してたのに…
というか、昨日あんなとこ見せといてよくそんな笑顔を向けられるものだ。
「おはようございます。今日は表の受付テーブルにいなくてもいいんですか?」
「はい!私がクックさんをお誘いしたんですから。当然です。」
そういうことにしておこう。
「では、何から始めればいいですか?」
「まずは身体能力を計ってしまいましょう。魔力量の測定は混みやすいんですよ。」
「わかりました。」
なんだろう。
メインディッシュは最後にとっておこう、みたいな感じがした。
身体能力は簡単に誤魔化せる。
Cランク冒険者の平均はなんとなくわかるが、僕はそれより強いと思われてるみたいだから、平均より少し高いくらいにしておくのが自然かな。
パワー測定、といってもただのパンチングマシーンだ。
Cランクなら平均は350といったところ。400までいくとBランク級だから370〜380くらいにしておこう。
「えいっ!」
それっぽい声を出してみた。
数値は、377。
いい感じ。
「377ですね。まあCランクの中だと高めですね。」
ハルさんも仕事モードだと安心できる。
次は敏捷性。
特殊な機械から放たれるレーザーを避けて測る。
レーザーは徐々にスピードが上がって避けられなくなったら計測終了。
シンプルなものだ。
これはどちらかというと自分の戦闘スタイルを決めるのに重要だ。
僕は短剣使いだから大剣使いの父さんよりは高くしておかなくちゃいけないな。
確か父さんは200ちょっとだったから、300くらいにしておこう。
が、どこまでいけば300かわからない。
前の人たちをみて判断しようとしたが、少しサンプルが足りない。
まあ、多少低くなってもいいから早めにやめよう。
息も切らしておかなくちゃ。
「計測終了です。クックさん凄いですよ。475なんて初めて見ました。」
あれ?これはやってしまったかもしれない。
周りがざわつき始めた。
「お前さん魔法だけじゃなく敏捷性まで高いのか。」
「一流のハンター並みだぜ。」
いつの間にかいたカマセとアーテが昨日のように声をかけてきた。
「あはは…たまたまですよ。」
冷や汗が止まらない。
「やっぱり、私が見込んだだけのことはあるね。」
モーブレまでいた。
終わったと思った。
さようなら僕のCランク冒険者生活…平凡な旅路…
「はいはい、みなさん落ちつてください。まだ計測中ですから。」
ああ、ハルさんありがとう。
でも、ここからはもっと手を抜かないと。
そんなこんなで他の身体能力も測り終えた。
あれ以降はうまくやれた。
だが最後に魔力力を計らねければならない。
ふつう、Cランクの短剣使いだと魔力量は2500くらいだ。
同じCランクでも魔法使いや賢者なんかは3500くらいはある。
ちなみに僕の魔力量は…3128000000。
そう31億2800万。
どう誤魔化せばいいの?
とりあえず、魔力量鑑定の列に並ぶ。
前の人たちを見ていると、水晶に手を当てて鑑定している。
あれ?何か変だ。
水晶に表示されている数値は22。
僕が見たところ、その人の魔力量は2290。
次の人は、僕がみると3770。
水晶に表示されている数値は37。
これ、上二桁しか表示されてない。
いけるかも。
仮に上二桁しか表示されないのなら僕の魔力量は31。
少し高めだが。
31億とかいうのよりは全然いい。
ありがとう、遅れた技術よ。
「はーい、それでは次の方どうぞ。」
担当に人が呼びかける。
僕の番。
お願いだから31って表示されてくれ。
「クック・フレリアンさんですね。それでは水晶に手をかざしてください。」
「はい。」
緊張する。
「えっと31ですね。短剣使いにしては高いですね。魔法使いとか賢者にジョブチェンジしてみるのもいいかもしれませんよ。」
「ありがとうございました。参考にします。」
短剣使いにしては高い、か。
ごめんなさい。
桁が違うんです。
実は魔法使いとか賢者だとしても高いんです。
そんな感じで鑑定は終わった。
「クックさん。良ければ冒険者カードの裏面に鑑定結果を載せることができますがどういたしますか?」
ハルさんが声をかけてきた。
確かに昨日みたいに騒がれないように載せておいた方が良さそうだ。
「お願いします。」
「で、本題なんですがクックさんの能力であればこの場でBランクに昇格させることもできますよ。」
ん?あれ?僕なんやかんやうまく調整したと思ったんだけど。
「えっ?でも、Bランクというには微妙じゃないですか?」
「まあ、本来なら試験が必要な数値ですけど、クックさんは顔の数値が高いのでそれで補えちゃいますよ。」
は?
「えっと、それはどういう…」
「男性冒険者ってBランク以上になるといかつい方ばかりでクックさんみたいな爽やかな方は貴重なんですよ。冒険者のブランディングも考えるとクックさんみたいな方はギルドとしてもどんどん推していきたいんですよね。」
ブランディング…
なんでこうなってしまうんだろう…
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