第2章冒険者としての僕

第6話はじめての街マナシヤ

6という数字がなんとなく好きだ。

4だったら四天王、5だったらトップファイブ、なんて言い方をされて少し目立つけど、6ってそういう点では地味な感じかする。

前世は父が政治家、母が弁護士だったからうちは経済的には余裕があった。

だから彼らは僕が小さい頃から教育にはお金をかけていたし、いくつか習い事にも通わせていた。

僕のことを見なきゃいけない時間が減るし、人口中絶反対活動によって作り上げられた自分たちの子供好きというイメージを守ることができる。

まさに一石二鳥。

てか、彼らにとって僕は金を払ってでも遠ざけたいものだったのか。

まあ、暴力を振るわれるよりはマシだ。

いや、あいつら暴力も振るってたか。

そんなわけで、僕はある程度勉強ができないと怒られるしぶたれる。

だから、勉強ではあまり目立ちすぎず彼らの面子を潰さないポジションを取らなければならなかった。

そこで僕は6位という位置に落ち着いた。

幸運なことに、中学も高校も結構有名な進学校だったから6位は客観的に見ればかなりすごいことだった。

友達の1人でもいれば堂々と自慢できるくらいには。

友達がいればね…

彼らはそれでも僕の成績を見るたびにため息を漏らしていた。

怒るに怒れないと言った感じだった。

まったく、テスト範囲から平均点を予想して何点取れば6位になれるか考えて実際にその点を取ることがどれだけ大変だったか。

確か、彼らが文系だったから僕は理系教科の方が得意に見せてたっけ。

当時の僕なりの悪足掻きだった。

そういえば、高校の時にやたら僕に突っかかってきたヤツがいた。

彼女は同じ中学でずっと学年1位だった。

高校に入ると別の名門中学のヤツらの中に埋もれていたが、同じ中学でずっと自分より下にいたのに高校に入った途端自分より勉強できるようになってるヤツがいた。

それは確かに面白くないよね。

高校の勉強が自分に合ってたとか、高校になってそれまで以上に頑張るようになったとか苦しい言い訳ばかりしてたっけ。

それにしても頑固なヤツでほぼ毎日次は勝つとか言ってたな。

結局1度も負けなかったけど。

確か、彼女の名前は…誠野愛(まことのあい)。

親がセレブかぶれで僕とは違う方向で苦労してそうだった。

まあ、今となってはどうでもいい昔話だ。

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ウラギが馬車に乗せてくれたおかげで予定より早くマナシヤに着いた。

簡単に別れの挨拶をして街の中へ向かう。

まず向かったのは冒険者ギルドだ。

僕は守人である父さんからCランク冒険者である証拠となる冒険者証明書をもらっているが、ギルドに行って正式な冒険者カードをもらわなくてはならない。

別に義務というわけではないが、カードは通行証や身分証明書としても使えるためカードを発行してもらった方が色々便利なのだ。

次は商人ギルド。

こっちはもしかしたら旅の途中で獲れたものを売買するかもしれないから念のため登録しておく。

それが終わったら宿屋を探す。

運良く良さげなところをすぐに見つけられた。

そして市場を見にいく。

これが今日のメインイベントだ。

マナシヤにはやはり新鮮な果物が揃っている。

地元で買うより安く質も高い。

料理人を目指すならその土地の特産品というのは見ておいて損はない。

しばらくここで料理の修行をするのだが、果物を使ったスイーツがメインになりそうだ。

携帯保存食になるようなものはそいいうものが売っているところに行って買うしかない。

果物って鮮度が大事だからこの土地のものを使って作るというのは難しい。

一応、ジャムは作って持ってこうと思っているが、ジャムだけあってもあまり意味はない。

パンを買っておこう。

そんな感じでマナシヤでの初日は終わった。

そういえば、この街の食事はフルーツソースをよく使うし、肉や魚を果物と一緒に煮た料理がたくさんある。

さっぱりとしていて美味しいが、毎日食べていると飽きそうなものだ。

スイーツは言うまでもなく絶品だった。

2日目、また街を散策していると冒険者ギルドが賑わっているようだった。

この土地の情報を知ることも何か役に立つかも。

ギルドの中を覗いてみると、どうやらビックバイソンという魔獣の群れが見つかったようだ。

ビックバイソンは本で見たことがある。

というか、この世界で確認されている生物はだいたい頭に入っている。

ビックバイソンは名前の通り大きい。

体重は2トンを超えるものもいるのだとか。

馬力は凄まじい。

そして、土魔法を使う。

と言っても魔法は大したことはない。

かろうじて魔獣に分類されているという程度だ。

で、1番大事なことだがその肉はあまり食べられていない。

独特の臭みがあり、なかなかそれを好んで食べる人はいない。

だが、僕には前世で培った科学の知識がある。

肉の臭みを消す方法もいくつか知っている。

そもそもこの街は果物がたくさん採れるのだからビックバイソンの肉も果物で煮てみればいいのに。

まあ、とにかくビックバイソンを狩りに行こう。

討伐依頼はCランク以上の冒険者が対象となっている。

こう言う時Cランク以上というのはよく見かける。

Cランクというのは僕にとってはちょうどいい。

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ビックバイソン、確かに物凄いパワーの持ち主だが、あまり強くない。

遠距離の火魔法が使えればそれで対処できるし。

弓矢や投石などで足を集中的に攻撃するのも有効だ。

つまり、僕の場合火魔法でこんがり焼き上げるだけの簡単なお仕事だ。

そう、簡単なお仕事のはずだった…

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