第4話怪しげな男との出会い

僕の冒険がはじまった。

リュックの中にはお金、野宿の道具、当分の食糧(といっても干し肉みたいな保存食ばかりだが)、調理道具が入っている。

もちろん刃物も何種類か入っている。

前世で両親を殺したものに似た形のものも。

どんなものでも使い方次第で毒にも薬にもなる。

前世の僕は蓄えた知識も、鍛えた肉体も、どんな道具だって両親を殺すために使おうとした。

で、結局殺した。

つまり全てを毒として使ったのだ。

両親の血に染まった刃物は今でも鮮明に思い出せる。

それと同じようなものを使おうとするたびに昔の自分、睡蓮冬落が脳裏によぎる。

これどうにかならないのかな。

まあいい。

そのうち忘れられるだろう。きっと。

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旅がはじまって少し経った。

今は近くにあるマナシヤという街を目指している。

果物の生産が盛んな街だ。

そいえば、ジャポネー王国は米の生産や漁業が盛んだ。

一部の野菜や果物は生産量が多いが、肉や野菜や果物は基本的に自給率が低い。

こういうところは料理人を目指す僕にとっては都合が悪い。

でも、みんな無視しているが薬に使えそうな植物はたくさん自生している。

もしかしたら料理に使えるかもしれない。

そう思って最近はそういう植物を使った料理を研究している。

食べられはするが、美味しくするにはもう少し工夫が必要そうだ。

たまに失敗してとんでもないゲテモノを作ってしまうが、そういうものは魔獣と遭遇したときに毒のかわりとして使おうと思っている。

自分か作った料理を毒として使うかもしれないというのは悲しいものだ。

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マナシヤまではあと1週間もあれば着くかというところまできた。

街道(と言っても特に整備されてるわけでもない草を刈っただけのものだが)の横の森で草を採取していたときのこと。

「誰か助けてくれー!」

男の叫び声が聞こえた。

急いで向かってみると、そこには馬車と1人の男がいてゴブリンの群れに襲われていた。

30体くらいだろうか。

1人でいるあたり腕にはある程度自信があるのだろうが、ゴブリンの数が多すぎる。

助けなきゃ!

今の僕はこんな事を考えるようになるまで人の温もりを覚えたのだ。

って、そんなこと考えてる場合じゃないか。

急いで男の元へ向かう。

「大丈夫ですかー。今、加勢します。」

「おお、助かるぜ。」

男は微笑んだ。

こいつ、結構余裕あったんじゃないの?

短剣を抜きゴブリンを切りつける。

なに、簡単なことだ。

冒険に出るまで父さんと修行もしたし、それ以外にも1人でたくさん修行をした。

実は1人の修行の方がためになったことは父さんには内緒だ。

とにかく、ゴブリンなんて敵じゃない。

多分、100体くらいまでなら息を切らすことなく倒せるさ。

そんなわけでゴブリンはさっさと片付けた。

襲われていた男はかなりの実力で、なぜ助けを呼んだのかわらないくらいだった。

途中からは大変そうにしているように見せる方に意識を向けていた。

「いや〜、ありがとな。兄ちゃん。」

男は随分と余裕そうだ。

「いえいえ、お兄さんこそお強いですね。」

いや、多分僕のほうが強い。

「ハハ。まあ一応Bランクの冒険者ライセンスは持ってるからな。」

Bランク。この世界では結構すごい。

僕は父さんの元でCランクまで習得した。

ちなみにCランクまで持ってないと1人で旅をすることはできない。

Dランクだとパーティーを組まないと旅なできないし、Eランクだと拠点となる街を決めてその周辺でしか活動できない。

冒険者とは名ばかりで、意外と自由度の低い職業なのだ。

「すごいですね。僕は先日やっとCランクになったもので。」

嘘だ。

「そうか。Cランクになってやっと一人旅ができるようになってワクワクしちゃった感じか。」

男は終始笑いながら言う。

そんな事を言いながらゴブリンの素材を集めているあたり抜け目ない。

意外と侮れないかも。

「まあ、そんな感じです。」

めちゃくちゃ嘘だ。

ずっと前、前世から料理人になりたいと思っていたし、旅をするというのも結構小さい頃から決めていた。

いろいろな手続きの都合で成人するのを待っていたくらいだ。

それに、ぶっちゃけなにがあっても死ぬ気はしない。

「そういえば、兄ちゃん結構若く見えるけど、いくつなんだ?」

「先日15になったばかりですよ。やっとお酒が飲めるようになりました。」

これは本当。

まあ、お酒はまだ飲もうと思わないけど。

「随分若いな。もう少し大きいた思ったんだが。」

これは老け顔という事だろうか。

だとしたらショックだ。

「俺はこう見えて23歳なんだぜ。」

!?嘘だろ?

こいつが母さんより年下?

キリッとしているがどこか渋さを感じる顔立ち。

装備も高そうなものを揃えてるし、30は超えてると思っていた。

人に言う割にあんたの方が老け顔だからな。

「そうなんですか…全然見えないです。」

驚きすぎてうまく返せなかった。

失敗したかな?

「ハハハ。まあ昔から実年齢より上に見られることが多かったな。俺、老け顔なのかな?」

その通りです。と言う声はグッと我慢した。

それにしてもこの男ずっと笑っている。

悪いやつではなさそうだ。

「いえいえ、きっと大人っぽいってことですよ。」

「ハハハ。兄ちゃん、世辞ってもんは無理に言うもんじゃないぜ。」

全くその通りだ。

この男人当たりが良さそうだし無理に気を使う必要はないかもしれない。

「ハハ。すいません。」

「いいってことよ。兄ちゃん俺が助けを求めたときすぐきてくれたし、きっといいヤツなんだろ。まあ、仲良くしとこうじゃないか。」

「本当ですか。ありがとうございます。」

「ハハハ。あ、そうだ俺の名前はウラギ。ウラギ・リベンジだ。」


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