第3話
ピンポーン。
土曜日の朝、今日は学校も休みなので思う存分睡眠を貪ることができる絶好の機会だ。これも一人暮らしの特権だろう。昨日は色々なことがあったのでその疲れもある。鳥の囀りも聞こえているが少なくともあと2時間は寝ないと気が済まない。
ピンポーン。
鳥の囀りに混じって甲高い機械音が部屋の中に響く。なぜこんな朝からインターホンが鳴っているのか。なぜインターホンの音はこんなにも人の神経を逆撫でするのだろうか。まあどちらも今考えることではないだろう。今はただ睡魔に身を委ね・・・
ピンポーン。
「だああ!朝からうるせえよ!宅配は全部午後に来るようにしてるだろうが!」
「ん?そういえば昨日ゆめが明日家に来るって・・・」
その時、玄関の方から聞き覚えのある声がした。
「ゆ、ゆうくーん?あれ?お部屋間違えてないよね?」
どうやらそういうことらしい。土曜日の朝に似つかわしくないモーニングコールはゆめによるものだったようだ。
「はいはーい。おはようゆめ。ちょっとだけまっててくれるか?」
インターホンのモニターを通してゆめへと呼びかける。
「あ、おはようゆうくん!もしかして起こしちゃった?また時間を改めてきた方がいいよね?」
「ああいいよ、ほんの数分待ってもらえれば大丈夫だから」
流石に起きたままの恰好で対応するというのは礼節に欠くというものだし何よりゆめの前であまり情けない姿は見せたくない。
とりあえず着替えと洗顔をすまし玄関へと向かう。
「ごめん、待たせちゃって。こんな朝早くからどうしたんだ?」
時刻は午前8時、平日ならまだしも休日の朝8時は十分早い時間だといえるだろう。決して俺がだらけた生活を送っているからそう感じてしまうわけではないはずだ。
そんな早朝に訪ねてくるのだから何かゆめにも事情があるのだろう。とりあえずゆめを家に上げて話を聞くことにした。
「あ、うん。今日はね、ゆうくんに朝ごはんを作ろうと思って」
「朝ごはん?」
「うん、ゆうくんに私が色々成長したところ見てもらいたくて」
(容姿や振る舞いなどから幼い頃から十分に成長していることは一目見ればわかるのだが・・・)
「それにゆうくん自分の事になるとちょっとだけずぼらなとこあるでしょ?朝ごはんとかいつも簡単に済ませちゃってるんじゃないかなと思って」
「うぐっ」
確かに一人暮らしを始めてから朝食は簡単に済ませることは多い。なんなら時間がないからと朝食を抜く日もざらにある。
「というわけでよかったら台所借りてもいいかな?」
「俺としてはすごく有難いしゆめの負担にならなければご相伴にあずかろうかな」
「うん!腕によりをかけて作らせてもらうね!」
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