第10話
うぃ~。汚い声を漏らしながら、フラフラとした足取りで夜道を歩く。ひっく。自分の意思関係なくしゃっくりが出る。
私は酔っていた。
「おっと…危ない!」
こけそうになった私を支えてくれる。
「あ、ありがと~、せい君」
「めちゃめちゃ酒弱いな」
「よ、弱くないよ…弱くない!」
「弱い奴に限ってそう言うんだよ」
「べ、別に弱くないって…。ただせい君が二人いるように見えるくらい」
「弱いじゃねぇか!」
ばれたか。
今日はせい君と一緒だからか、かなり飲み過ぎてしまった。ビール2杯とハイボール2杯、カルーア1杯。いつもお酒は1杯くらいにしてたのに、こんなに飲んじゃった。頭がすごくフワフワして、良い気持ちだ。
ファンファンファン…。
こんな真夜中にサイレンの音が響く。サイレンの音は最近よく聴いた。音はどんどんと近くなっていき、パトカーが2台私たちの真横を過ぎ去った。
「…パトカー多いね」
「だな」
「じ、事件かな…」
「かもな」
「こ、怖いね…」
「だいじょーぶさ! 俺の防御魔法がかけられているからな!!」
「そ、そうだね! あってよかった、防御魔法!!」
「しゃあっ!!」
「やー!!」
夜中、妙なテンションに2人は支配される。
こんな訳の分からないことで熱くなれるのはお互い酔っぱらていたからに他ない。誰が来ても負けない無敵感があった。
だけどそんな私たちに横やりを入れるように、突如として爆発音が背後から轟いた。
「な、なに…?」
背後には車が歪な形で燃え上がっていた。延焼している車を目を凝らして見てみると、それはパトカーのようだった。たぶんさっきすれ違ったパトカーだ。車だと認識できない程、それは無惨なものに変わり果てていた。
今どこからきたんだ。
夜空を見上げる。満天の星々が夜空を覆い、キラリと一筋の光が流れた。流れ星だ。それに赤い。願い事でもしてみようか、そう思っていると星に違和感を持った。それはどんどん大きくなって、此方に近付いてるように思えた。というか近
「危ない!!」
私を押し退けてせい君が前に飛び出した。その刹那、パトカーが目の前に降り注いできた。星の光だと思っていたものはサイレンの光で、流れ星と勘違いしてたのはパトカーだった。
魔法の力で難なくキャッチしたものの、せい君がいなければ私は来世にゴーだった。
「だ、大丈夫!?」
「俺は平気だが…おい!」
せい君はパトカーを軽々と道路に置き、フロントガラスをバンバンと叩く。車内では警察官が怯えた顔つきでハンドルを握っていた。私たちに気付くやいなや、そのままパトカーから這い出てくる。
「ひ、ひぃっ…! 助けて…!?」
「お、おい…」
せい君が喋りかけると、今にも気絶しそうな程に警察官は怯えた様子を見せていた。化け物だ…弾をピーナッツ…等と脈絡の無いことをぶつぶつと呟き、脂汗がどっと噴き出していた。
せい君と互いに目を合わせる。
「酔い覚めたわ」
「わ、私も…」
パトカーの車体にせい君は目を向ける。近くに寄るとどこか違和感に気付いたのか、頭をひねる。
「この傷は…」
車体には大きな傷がえぐれるように付いてあった。
「な、なにこの熊がひっかいたような傷痕…」
「いや違う…これは……………」
「狼だよ」
パトカーの降ってきた方向から現れたのは、狼のような姿をした二足歩行の、化け物だった。
「久しぶりだな……セイヤ・チグサ」
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