胸をしめつけられるような思い出
- ★★★ Excellent!!!
>『そもそも私小説のおかしいところって、誰かに聞かれたというわけでもないのに唐突に自分の話をし始めるってところかなって思う』
この作品は、私小説への考察から始まる。それによって逆に「続きが気になる」という思いが読者の胸のうちに生まれる仕掛けになっており、高い筆力を感じます。
物語の中では、小学四年生のときの心の傷、それからK君とAさん、筆者との関係が描かれています。K君との思い出には、驚きの事実が含まれていて、つよい関心を引くとともに、胸がしめつけられます。
書き出しや記憶に対する考察などからは、世界と真摯に向き合う筆者の姿勢が伝わってきます。その姿勢が、この作品に独特の味わいを醸し出しています。