パララックス

西添イチゴ

私小説

そもそも私小説のおかしいところって、誰かに聞かれたというわけでもないのに唐突に自分の話をし始めるってところかなって思う。


ぼくが経験したこととか、ぼくがなにを思っているのかなんていうことは、「べつに知りたいと思ってないんですけど?」って言われたら、まあそれはそうだろうなって思う。


「この人の話が聞きたいな」って思うのって、その人がとっても成功しているとか、その人とぜひともお近づきになりたいって思うような魅力があるとか、そういう場合に限るんであって、ぼくみたいなどこの誰だか分からないただの高校生の経験とか思っていることとかを聞かされても、たいていみんな困っちゃうだろうなって思う。


だから、「あ、これは私小説なんだな」って分かったら、もうその続きを読まないっていう人がいたとしても仕方がない。そういう人に「もうちょっと読んで!」とか言えない。実際もうちょっと読んでもらったところで、その先になにか面白いことが書いてあるというわけでもないんだし。


ぼくも頭が悪いなりにそれくらいのことは考えることができるから、本当なら私小説なんて書くよりも、誰が読んでも「楽しい!」っていうような作り話フィクションが書けたらいいなって思ってる。


というわけで、いつかきっとそういうものを書くつもりでいるんだけど、とりあえず今回はまた私小説みたいなものを書いてしまうことになるんだと思う。






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