20話目
ジワジワと噴き上がる熱気。
今年の夏も暑い。
『続いて次のニュースです。埼玉県で援助交際で逮捕された◯◯を逮捕しました。容疑者は…』
なんとなくテレビをラジオ代わりにして、優は思案に暮れていた。
そういえば藤崎と付き合い始めたのはちょうど今頃だったな。優は思い出した。大好きな明るく元気な彼女と付き合う事になった幸せ。まさか当時の自分が一年後に破局するとは誰も予想しなかっただろう。
優は仕事から帰り、真っ先にパソコンの前に立った。本当に藤崎が風俗嬢になったのか、今どうしているのか、知りたかった。
確か彼女のブログ元は、MAXY(マクシイ)というSNSサイトの中にあった。
どうやって検索するかは少し苦労した。
彼女の生年月日、出身校、この2点が分かってないと突き止めるのは困難だ。
幸い彼女の生年月日はもちろん把握していたし、彼女とはお互いの事についてたくさんの話をしていたので、出身校も覚えている。
生年月日と出身校、この二点を入力して検索をかける。すると、一つのブログが検索欄に出た。
『オタ日記』と題するタイトルで、アカウント名はライノエLOVEと、コスネームでも本名でもなかったが、サムネイルには見間違う事はない、藤崎のノエルのコスプレ写真が載っていた。
早速ブログを開いてみると、なんと彼女は今でも頻繁にブログを更新していた。
タイトルはほとんど書いてない。日付だけが表示されている。優は適当に開いてみると、そこにはこう書いてあった。
『今日もパチンコで負け。クソ』
藤崎はパチンコをやっている事が判明した。他にも、
『今日はユニコーンで3万発ありがとう』
『パチ屋禁煙ほんとクソ』
パチンコ狂いの上に、日頃から喫煙していた事も判明した。職場や優の前では今まで吸わなかったんだな。優は知らなかった藤崎の一面を知って戸惑っていた。
そしてある記事には。
『客に乳首ばっか責められて痛えー』
『今日はキモ客ばかりキモ』
『フル稼働で5万稼げた明日の軍資金ゲット』
どう考えても風俗で働いているような記事ばかりであった。
そこには優との話題は微塵も無かった。
付き合い出した頃も、一緒に併せをした事も、そして、プロポーズをした事も…
きっと藤崎の親が貧しいわけでもなく、彼女自身、パチンコ狂いで貧乏だったのだ。
そして手っ取り早く稼げる職業…風俗を選んだのだ。
優はひどく落ち込んだ。もう藤崎のブログを見る気にはなれなかった。
あんなに純粋そうで元気な藤崎だったのは偽り。優は改めて三次元の女はクソだという事を認識した。
それでも。優は藤崎に最後のNINEを送ってみた。内容は、
『会社の同僚から聞いたよ。今は風俗で働いている事。それでも構わない。お金がないなら俺も協力する。あのプロポーズは本気だ。今でも直子ちゃんを愛している』
と。
これが最後だ。もし彼女に優への愛情が残っていればきっと反応はある。そう信じていた。
しかしメッセージが返ってくる事は無かった。
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