19話目
どうしてこんな事になってしまったんだろう。
あの時、藤崎は笑顔でプロポーズを受け入れてくれた。セックスもした。
しかしそれ以降、彼女に会えなかった。
職場にも顔を出さない。聞くところによると、藤崎は仕事をやめたらしい。理由は今より稼げる仕事を見つけた、だそうだが、無論、優にそんな話は初めて聞く事だった。
いくら電話やNINEを送っても、繋がらず、メッセージも既読すら付かなかった。
それなら彼女の住んでいるアパートに行ってみようとしたら、既に退去されていた。八方塞がりである。
優は激しく落ち込んだ。自分に落ち度があったのではないかと責めずにはいられなかった。
藤崎の安否も心配だ。会う機会が減り、セックスレスになり、顔を見る度に憔悴しきった様子。髪は荒れ気味で、毛色も変えた。そしてタバコを吸うようになった。
実家が貧乏である事は、度々聞いた。それも関係しているのであろうか。
今となっては全てが謎で、何も分からなかった。
ただ、自分の胸にぽっかりと穴が空いたような感覚がずっと引きずっていた。
彼女が姿を消して一ヶ月くらい経った頃だ。
仕事の昼休憩に入り、優はいつものように一人で食事をしていた。
周りの喧騒など耳に入らない。淡々と食べるだけ。
そんな時だ。
優の隣で食事をしている四人組の男達が、信じられない事を口走った。
『そういやこないだデリヘルで新人の子呼んだんだけどさ〜、それがすっげえ藤崎ちゃんに似てたんだわ』
!?優は思いがけない話題に、耳を傾けた。
『藤崎って第七にいた胸のでかい?』
『そそ。でもなんというか雰囲気が全然違かったんだわ。胸はでかかったけどよ』
『マジで?俺も呼んでみようかな?』
『それがさ〜俺もまた呼ぼうと思ったら、アレ以来ずっと欠勤らしくて会えねーんだわ』
『なんだよそれー、マジで藤崎なんかよ?』
『わっかんねえ。思い出したらもしかして別人のような気もするわ』
それ以降は他の話題に変わり、食事を終え、四人組は立ち去って行った。
デリヘル…風俗嬢を派遣し、性的サービスを行う仕事。
今より稼ぎの良い仕事。もしかして本当に藤崎は風俗嬢になってしまったのか。しかしそれを確認する手段はない。同僚が会えなくなってしまったという事は、また別の店に移ったのか。仮に優がお店に行っても、いてもいなくても会えない予感がした。
ふと、思いついた。
実は藤崎はSNSでブログを書いている事に。
それはいつの頃だったかは思い出せないが、藤崎のアパートに泊まりに行った時に、パソコンが起動していて、モニターに映っていたのは、ブログらしきものだった。
優は野暮な詮索はしなかったので、特に聞いたりする事もなかったが。
ただはっきり言えるのは、そのブログが唯一、藤崎の現状を知れるのではないかと優は思った。
ダメ元でも構わない。調べてみよう。彼はそう決意して、食事を終えた。
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