17話目
それから優は仕事に精を出しつつも、休日はイベントでコスプレ三昧であった。
そこに山井と一緒の併せをする事はあるが、藤崎の姿は無かった。
やはり原因は家庭の事情だろう。そればかりか、最近は仕事を休みがちだ。
藤崎とのNINEの連絡頻度も減った。おはようとおやすみの二言だけの日もあった。仕事も休みを合わせる事が出来ない時もあり、急激に温度差を感じた。
このままではいけないと思い、優は先日の藤崎とのデートでペアリングを作ろうと、ジュエリーショップへ行き、自分と彼女の薬指のサイズを測った。デザインは藤崎の好みに合わせる事にした。
彼女は久し振りに嬉しそうだった。デート自体もご無沙汰していたので、優も嬉しかった。
そうして指輪を注文し、会計となるのだが。
『十八万円になります』
まあ分かっていた、こうなる事は。しかし優には手持ちで払えるお金など無く、
『カードで』
クレジットカードで会計を済ませた。
優はだいぶ前にクレジットカードを作った。年収と仕事、そして何より真っ白な与信枠に、審査は滞りなく通った。
どうやらクレジットカードにはリボ払いというものがあり、毎月一定額を返せば大丈夫という制度があった。彼にとってのリボ払いというのは、ローンを組むようなものだという認識だった。
『優くんありがとう…本当に嬉しい』
会計を済ませた後の車中で、藤崎はぽつりと言った。
彼女は会う度に憔悴しているような変化があった。
艶の良かった毛並みはなくなり、髪を伸ばして色も茶髪になった。肌も以前のような潤った肌質とは違い、厚化粧で誤魔化している感じであった。
そして何よりも、
『タバコ吸ってもいい?』
彼女はタバコを吸うようになった。手慣れた手つきで火を灯す。
もともとタバコは吸っていたらしいが、優との付き合いで辞めたらしい。
煙を燻らして、味わうかのように吸う藤崎に、かつての明るく清純だった面影は無かった。
それでも優は、彼女を愛していた。
その為ならば二十万円くらいの出費を厭わない。彼はもう藤崎と結ばれる以外、考えはなかった。
『じゃ、また明日、仕事でね』
彼女をアパートまで送り、そのまま帰る。
藤崎とのセックスはもう一ヶ月はしていない。求めようとしても『今日は生理だから』とか、『その気はないかな〜』等と言われ、拒否された。
もしかして俺は嫌われたのか?そう考える事もあったが、別れ話を切り出す雰囲気もない。セックスレスの時期なのかもしれないと自分に言い聞かせた。
ペアリングをすれば、また以前のように明るくなってくるはずだ。そう期待して、優は帰路へ着いた。
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