第9話『あの子、うしろ』

『あの子、うしろ』


むかしむかし、都会の片隅に、小さなマンションが建っておったそうな。


その最上階の部屋に、ひとりの女子高生が住んでおってな、スマホで自撮りばかりしておった。


鏡の前でぱしゃ、カフェでぱしゃ、夜景を背景にぱしゃ――とにかく、毎日何枚も何枚も、自分の写真を撮っては投稿していたそうな。


ある日、ふと気づいたんじゃ。


「なんだか、最近の写真、後ろに変な影が写ってる気がする……」


最初は、ただの気のせいだと思っていた。


けれど投稿するたび、少しずつはっきりしてくる。


髪の長い誰かの姿。目だけがじっと、こっちを見とる。


ある夜、寝る前に鏡越しの自撮りを撮ったときじゃった。


画面に写ったのは、自分と――その肩越しに、見知らぬ顔がぴたりと張りついておる写真じゃった。


目が合ったその瞬間、スマホがパリンと音を立てて割れ、真っ黒な画面に、たったひとことだけ浮かび上がった。


「うしろ、うしろ」


それっきり、その子の姿を見た者はおらん。


――こりゃまた、ぞぞっとする話でござった。


おしまい。


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