第7話『かくれんぼの手』

『かくれんぼの手』


むかしむかし……いや、そう遠くない頃。


ある団地に住む子どもたちのあいだで、ひとつの遊びが流行ったそうな。


「午後四時四十四分に、団地の裏の倉庫で“かくれんぼ”をすると、もう一人“隠れる子”が増える」


なんとも妙な話じゃが、子どもというのは、こういう噂話が好きなものでな。


小学五年の少年が、友だち数人とその噂を試すことにした。


時計がちょうど午後四時四十四分を指すと、倉庫の鉄の扉を開け、中に入り、ジャンケンで「鬼」を決めた。


隠れる時間は一分、鬼の子が目を閉じ、数を数え始めると――


「ひとーつ、ふたーつ、みぃーつ……」


耳元で、小さな声が、重なるようにして数を数えた。


あれっと思ったが、すぐに目を開けると、誰もいない。


気のせいかと思い、ひとりずつ見つけていったのじゃが、最後の一人――友だちの数を数えても、ひとり多い。


あれ? こんな子、いたっけ?


長い髪で顔の見えない子が、倉庫の隅っこにしゃがんでおった。


「だれ?」


そう声をかけると、その子は、ゆっくりと顔を上げた。


だけど――目も口も鼻も、なかったそうな。ただ、のっぺらぼうの顔に、子ども用の名札だけがついておった。


そこには、こう書かれていたそうな。


「みつけて」


少年たちは泣きながら逃げ出し、二度と倉庫へは近づかんようになった。


けれど、ある日ひとり、また“かくれんぼ”をしに倉庫へ入った子がいたそうな。


その子はもう戻ってこなかった。


そして今日も、その倉庫の奥では、ぽつんと、かくれておる子がおるそうな。


「つぎは、あなたが鬼ね」


――そんな、ぞわりとする話でござった。


おしまい。


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