第2話『歩道橋の手すり』

『歩道橋の手すり』


むかしむかし、ある町に、古びた歩道橋があったとさ。コンクリートの灰色は風雨にさらされ、手すりには、こすれたシールや落書きがべったりと貼られておった。


けれど、その歩道橋には、ちと妙な言い伝えがあった。


「夜中の三時、誰もいないはずの歩道橋で、手すりに手を置いてはいけない。連れていかれるぞ。」


と、子どもたちのあいだで、ささやかれておったのじゃ。


ある夜のこと。ゲームに夢中になって、つい終電を逃した若者が、近道しようとその歩道橋を渡ったそうな。


時間は――三時ちょうど。


夜の闇に、車の音は遠く、街灯の光がぼんやりと、手すりを照らしておった。


「ばかばかしい、迷信なんか信じるもんか」


そう言って、若者はぐいっと手すりに手を置いたんじゃ。


すると、ぞわり。


まるで冷たい手が、自分の手をつかむような感触がしたそうな。


若者は驚いて手を引こうとしたが、手すりはびくともせず――そのまま、ずるずるずる、と引きずられるように、身を乗り出してしまった。


ふと足元を見ると、そこにはもう地面がなかった。


次の瞬間、若者の姿は、どこにも見当たらんようになった。


朝になって、通勤途中の人が手すりを見ると、そこには新しい落書きがひとつ、増えておったそうな。


それは、こう書かれていたそうな。


「つかまないで」


――不思議で、ちと寒気のする、そんな話でござった。


おしまい。


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