遣らずの雨
異常な程に強く雫が窓を叩く。
暴風雨って名前に相応しい程に大暴れ。
それに反してここから見る街は静かで閑散としていた。
もっと苦しむんじゃないかと思っていた。
もっと焦燥感に駆られるんだと思っていた。
でも案外こんなものなのね。
生暖かいこの温度も、鉄臭いあなたの匂いも、なんだか今は心地いい。
後悔なんてない。
だってこの人が悪いんだから。
大切な人を唆した、何もかもを私から奪ったこいつが悪い。
私は何も悪くない。
悪くない
悪いのはこの女
この女なのに
私じゃダメなんでしょ…
私がどんなにあなたを想っていても、私がどれだけあなたに尽くそうとあなたはこの女を選ぶんでしょう。
私とまた笑ってくれて、私にまた優しくしてくれて、私がまたあなたを好きになってもあなたは私を好きになってくれない。
この女を殺してもあなたは私のものにならない。分かってたはずなんだけどな。
「あたしって何なんだろう。
誰にも愛されないあたしって」
頭も心もぐちゃぐちゃになってどうしようもなくなって呆然と空を仰ぎ言葉を投げかける。
悲しい時も辛い時も寂しい時も、いつだって手を伸ばせば君はそこにいてくれた。君だけは何も変わらずただそこにいてくれた。
友人と呼べる人間は周りにいなくて、家族は私に興味なんてなくて、ずっとずっと独りだった。
学校に行って教室で会って
「おはよう」って、「今日抜き打ちテストあるらしいよ」ってそんな中身の無い会話ができるだけで本当は良かった。
でも今は些細な会話でさえも雨雲に向かって投げ掛けることしか出来ない。
好きだと言って、好きだとかえって来なくとも、ただ一緒に居れれば私は充たされる。
そんな感覚があったから良かったんだ。
良かったんだ。
良かったのに。
私は求めすぎた。欲張りすぎた。
貴方だけがたまらなく欲しくなってしまった。
きっとそんな私への罰なのだろうそう思った。
突風は私を押し身体は空へと投げ捨てられた。
硝子に映る空を掴もうと惨めに藻掻く自分を見て、涙でぐちゃぐちゃの顔みて
「あぁ、私はあなたが好きなだけなんだ、ただ、それを伝えることが出来ないただの臆病者だったんだ。ただそれだけの人間だったんだ」
嫌われることを恐れ、また1人に戻ることを恐れ、貴方が傍から居なくなることを恐れた。
恐い事を恐いと言えないまま、1番大好きだったあなたを傷つけて初めて、
あぁ、こんな私を見て君はどう思ってくれるだろうか。
ねぇ。
霽れを待つ。 空繰 巧 @KarakuriTakumi
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