私雨

もし、雨が降ってなければ。

もし、雨が止んでいたら。

もし、傘があれば、それをさしてくれる人がいたならば-



私は私のままでいられたのかな、こんな事しなくて良かったのかな。


なんてどうしようも無くなった私のくだらない妄想がぐるぐると頭の中をいっぱいにする。


今の私を見て君ならなんて言ってくれるだろうか。


と言うより今の私を君は見てくれるだろうか。



見てくれると良いな。





「どんな境遇でも必ず雨は降る、でもやまない雨はないんだよ」



夜道、少し前に掛けられた言葉を思い出す。私はこの言葉にどれだけ支えられていたのだろうと空を仰ぐ。



挫けそうになった時、大きな壁に直面した時。

この言葉があったから私は色んなことを乗り切って今ここに居れるのだと思う。



私にとって、とてもとても大切だった言葉。

大切だった人の言葉。



初めて貴方と出会ったのは雨で帰れなくなって困っていた日だった。


貴方のその優しさは文字通り私に傘をさしてくれた。なんてこと無いかもしれないけど、私が貴方に惹かれるには余りにも十分だった。



貴方を見掛ける度に、貴方と会話をかわすのも特別な時間だった。


ただ振り向いて欲しかったの。

私だけを見ていてほしかったの。

それだけだった。



胸のかなに渦巻く想いは吐き出すことも飲み込むことも出来ずに日に日に大きくなり、手に負えなくなった時初めて気づいた。



私の中にあったコレはのは貴方への恋心だったのだと。



誰よりも私は貴方を理解し尊重し想っていた、

貴方の友人なんかよりもずっと、ずっと、ずっと。




でもあなたが選んだのは私じゃなかった。




私じゃなかった。




心の渦が大きく大きくなる。



今まで私にくれた言葉はなんだったの?

今まで私にくれた優しさはなんだったの?



今まで………



大きくなりすぎた渦はフッと消え去った。

頭の中を支配していた嫌な思いだとか嫉妬は驚く事に私の中からスっと消え去った。

すごく爽快な気分になった。心も体も軽くなった。


そして、ひとつの結論に至った。




そうだ、きっとこれは貴方の意思じゃないんだ。

あの女に何か悪いことを唆されたんだ、騙されてるんだ。




守ってあげなきゃ。



私が助けてあげなきゃ。



大好きな人を守らなきゃって使命感が体を突き動かす。スマホを片手に取りある人へと電話をかける。




不思議と心が少し躍った。

濡れた身体を弾ませながら約束の場所へと向かう。



まっててね。



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