驟雨

「どんな境遇でも必ず雨は降る、でもやまない雨はないんだよ」



ガキの頃からずっとずっと聞いてきた口癖。

落ち込む度に、躓く度に聞かされてた言葉。




きっかけは些細なことだった。


幼ない頃、公園で生まれた小さな縁は何年たっても変わらないまま今に至る。

同じ学校に通って同じ帰り道を歩いて馬鹿みたいな事で腹抱えて笑ったり。

小さい事で馬鹿みたいな大喧嘩したこともあったっけな。



ふと昔のことを振り返りながら薄暗く気味の悪い空の元1人歩く。

死ぬ訳でもないのに、まるで走馬灯のように思い返してしまう。



鼓動が早くなる。

それと共に急ぎ足になる。

何を焦ってる、落ち着け…落ち着け。

必死に自分に言い聞かす。

大切なお前の事考えるとどうも急いてしまう。



深く深呼吸をする。

雨が降る前の湿った臭いがする。



こんな時お前だったら親身に寄り添ってくれて、冷静に判断してくれるんだろうな。

いつだってそうだ、お前はいつもいつも絶対に俺を助けてくれてる。



お前は俺の太陽のようだった。

どんなに迷って困り果てようと俺を優しさで照らしてくれた。温もりをくれた。



「…だから」



あの時俺に手を差し出してくれたのはただの気まぐれだったのかも知れない。

お前にとっては特別なことではないのかもしれない。


でも、お前があの時傘をさしてくれなければ、今の俺はいなかったかもしれない。

そんだけお前は俺にとって大事な人なんだ。



もし、お前に何かあった時は必ず俺が、あの時のお前みたいに助けてやる。

お前が1人止まない雨に濡れてうごけないなら俺がお前の傘になるから、



気持ちと足が駆ける。

それに呼応するかのように雨は降り、やがて酷く大きい粒が地面を叩く。



雨だってなんだって、どんな手を使ってでもお前を必ず護ってやる。




だっておれたち親友だろ。






力なく進む足はピタリと動きを止めた。

横断歩道の向こうにはあいつが傘もささずに立っていた。



「だからさだから、お願いだからそんな顔しないでくれよ」



弱々しく情けない声は大雨にかき消された。

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