第10話

三年になって、クラスが離れた。


それでも、ある日×××は突然、私の教室の前に友達に連れられて来た


髪が、赤くなっていた。

いつかふざけて話してた、赤髪。

それが本当になって、私の前に現れた。


「…似合ってる」


って言いたかったのに、

「なんかやば」って笑うしかなかった。

×××は「だろ?」って言って笑って、そのまま帰っていった。

ずっと閉じ込めていた気持ちが、またふわっと浮き上がった。


それからも、×××とは話さなかった。

姿を見ることはあっても、目が合えばすぐにそらされた。


新しいクラスに慣れていくなかで、

わたしだけが、時間の底に取り残されてる感じがしていた。


帰り道、イヤホンから流れてきたのは、×××が前に教えてくれた曲。

再生リストのなかで偶然かかったその音が、

思い出したくない記憶を、勝手に呼び戻してきた。


ティアラ、ギター、LINEの写真、

チュッパチャップス、nちゃんの笑い声。

全部混ざって、甘ったるくて、胸がむかむかした。


あの日にもらった飴の味。

あれとおんなじ。

いろんな感情が混ざり合って、ぜんぶ気持ち悪くて、でもなぜか捨てられなかった。


あの飴は、今のわたしそのものだった。

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