第5話

文化祭の準備が始まった。

教室の机を端に寄せて、壁に飾りを貼って、男子たちが無駄に脚立を取り合って。

その熱と埃の混ざった空気のなかで、私はスマホのスピーカーから音楽を流してた。


ティアラと猫耳は、私が家から持ってきたやつだった。

文化祭でつける用にって。

机の上に置いてたのを、×××が勝手に手に取った。


「うわ、なにこれ」

「やめて、マジで壊さないで」

「いやいや、俺めっちゃ丁寧に扱ってるから」


×××は猫耳を頭にのせ、ティアラを重ねて、教室をゆるゆる歩き回った。

なにそのポーズ、ってくらいノリノリで、女子たちが笑いながらスマホを構えてた。


笑いながら見てたけど、心のどこかがざらついた。

×××の頭の上で揺れるティアラを見て、ちょっとだけ嫌な気持ちになった。

自分の持ち物が、勝手に×××のものになっていくみたいで。


でも、笑ってる顔を見てたら、それもどうでもよくなった。

結局、また写真を何枚か撮った。

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