第3話

夏休みが近づいたころ、×××からLINEが来た。

「ギター弾いてやるから見ろ」

動画が添えられていて、開いたら、×××がギターに指を滑らせていた。


その手が、思ってたよりずっと静かで、白かった。

笑って「すごいじゃん」って返して、動画を何回も再生した。

教室で見たよりも、×××の声が近くて、くすぐったかった。


保存しようと思って、そのまま忘れた。

次にLINEを開いたときには、もう見られなくなっていた。

それに気づいた瞬間、喉の奥が詰まって、スマホを床に落としそうになった。


夏休みが終わった


友だちがみんな部活で、お昼ご飯をわたしのグループで一緒に食べてる時に、×××は言った。

「舌ピ、開けてみようかな」

「赤髪とかさ、一回やってみたいんだよね」


ぜんぜん現実的じゃない話だったけど、口調は本気に近かった。

「一緒にやってみる?」とふざけて返してみたけど、×××の反応は見れなかった

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