第2話
×××は、最初から私の名前を呼んできた。
呼び捨て一年の頃から、あいつのことは知っていた。
自然すぎて、逆にびっくりした。
クラスの中ではわたしは“明るい子”だった。
声も大きいし、笑うのも上手だった。冗談を返すスピードにはちょっと自信があった。
でも、それは外向けの“元気な自分”だった。
ほんとうの私は、教室の隅に一人でいるときのほうが素に近かった。
×××と喋るときだけ、その“外向けの私”と“中身の私”が、ちょっとだけ混ざった。
だから、気が楽だったのかもしれない。
×××の喋り方は、いつも変わらなかった。誰に対しても雑でフラットで、それが逆に信用できた。
授業中に後ろから小声で絡んできたり、いきなりスマホの画面を覗いてきたり。
嫌だな、と思いながらも、×××が何を見てるのか気になってた。
×××は、よく喋る。
その日あったこととか、昨日の夜何食べたとか、何にも意味のない話を一方的に喋って、
それを私にだけ共有してくるような、変な感覚だった。
ある日、×××が勝手に私のスマホを開いて自撮りを撮った。
「残しとけよ」って、にやにやしながら言った。
「いやすぐ消すぞ」って言ったけど、結局カメラロールには何枚も残ってる。
削除もできないまま、ずっと。
気づけば、わたしも×××の名前を自然に呼んでいた。
呼ぶたびに、喉の奥が少しだけ熱くなる感じがした。
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