まぶしい横顔に、私は何度も恋をした

🍬

第1話

一年の頃から、あいつのことは知っていた。


知っていた、というのはたぶん嘘で。

ただ、廊下ですれ違った回数だけが記憶に刻まれてる。

名前も知らない。顔も、いつもはぼやけていた。

けれど、教室の空気を乱すくらいの笑い声や、教壇に届くほどの悪ふざけだけは、耳の奥にひっかかってた。


私はそのたびに心の中でため息をついて、でも、目では追っていた。

近くにいるようで、いつも遠かった。あいつは。


高校二年、出席番号が前後になった。

彼の席は、私のすぐ後ろ。

名前を呼ばれる順番が、私のすぐ次になったとき、背中に小さな棘が立つのを感じた。


「“今度会ったら****しよう”」


×××が笑いながら言った。

クリープハイプの《he is mine》の一節を、完全にノリでインスタに載せただけだった。

深い意味なんか一切ない。ただ、歌詞が頭に残ってたから。

でも、×××はそれを面白がってきた。


「歌詞だし」とだけ返した。

まじめに相手する気もなかったし、そもそもそんなに喋ったことなかったから。


×××は笑いながら、でも目だけはちょっと真顔だった。

からかいながら、私のことを観察してるみたいな、そんな目。


それが、最初だった。

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