番外編 情けない自分はもう結構
**「シュート!3ポイント!」**
審判を務める私は淡々と役割をこなす。
明日は全国大会の本番。ちょうどいい練習相手だ。
相手も全国大会出場校で、「新生代チーム」とかいうらしい。組み合わせを見ると、決勝まで当たらない予定だ。
もし会えば偵察、会わなければ練習と思えばいい。
そんな気持ちで、バスケ部は喜んで試合に向かった。
**「それでは、日金友好中学対星降私立高校の試合を開始します」**
ところでこの学校名…なんで「星降」なんだ?
誰も深く考えたことないけど、調べたら創立者の夢で「宇宙人が降りてきた」かららしい。
まあ、俺には関係ない話だ。
試合が始まった。正直バスケには詳しくない。というかスポーツ全般に興味がない。
「え?普段何してるかって?」
もちろんケンカとトラブル解決だ。最初は何のために始めたか忘れたけど…物心ついた時からやってた。でももう引退しようと思ってる。
試合を眺めながら、手持ち無沙汰にハンバーガーをかじる。
近所のバーガーキングで買った朝食だ。
家族で早起きするのは俺だけだから、味噌汁やオムレツを作る気もない。天ぷらだって揚げ物なんだから、大差ないだろう。
レタスとサラダソース、そして挽肉かどうかも怪しいパティ…やっぱりマクドナルドよりマシだ。
まあどうでもいいんだけど。
審判は本当に暇だ。両チームルールを熟知してるからファールもない。練習試合で反則しても意味ないからね。
ただ前半は相手が圧倒的に強かった。「身体に慣れてないから」と言いたいところだが、もう一ヶ月も経ってる。
**「俺が勤めてるのと同じぐらいだ」**
現実は、我々が万年の負け組だということ。歴代ずっと、まるで相性が悪いかのように負け続けてる。中学から応援してるのに、むかつく。今シーズンは期待してたが、一ヶ月のブランクが響いたか。
ちなみにこの大会は男女混合で、女子3人以上必須という変なルールだ。
でも本番でどうなるかはわからない。この試合が全てじゃない。
**「だから、両チームとも決勝に進めよ」**
相手チームの面々は…まさに超人ぞろいだ。
先頭に立つ「ヒカリ」と彼氏の「カケル」。華奢な女子体なのに爆発的なパワーで、ぬいぐるみで人を殴れそうなオーラ。未来から来たんじゃないかと思わせる。
カケルは苗字不明で、噂では皇族説から地底人説まで…
「ダイチ」は学業優秀、特に理科が得意。このメンバーでは珍しく常識人だが、恐竜のフurryが好きらしい…
**「人の性癖は自由だ」**
「紅(くれない)」は登山の達人で、皮ジャンを着こなす謎の転校生。ハーモニカの腕前に女子はメロメロだ。
「朝倉」はヤクザの御曹司だったが、現在は絶縁中。極道を見ると怒り出すから話しかけられない。
みんな異常なスタミナの持ち主だ。特殊体質か?
今攻めてるのは「ミナト」兄弟。有名デザイナーの息子たちで、運動神経は抜群。頭も悪くないが、たまにドジを踏む。
赤と青のジャージがマリオ兄弟みたいで、兄は建築家、弟は科学者志望だそうだ。
「工藤」はいつもお茶汲み係。光太郎と謎の関係があるらしいが…まあいい。
「マナカ」はチームのエースの一人だが、バイトと練習のダブルワークで疲労困憊。本番出られるか不明だ。
代わりに出てる「ハルキ」と「カナタ」は幼なじみ。ギャルゲーみたいな再会を果たし、バスケ部でもコンビを組む。羨ましい限りだ。
ハルキは相変わらず強い。空手のチャンピオンでもある。
新加入の「ソラト」と「ユウマ」も楽しみだ。
こんな強豪相手…正直厳しい戦いになる。
でも…俺は信じてる。連携も戦術も実力も。仲間を信じるのに理由はいらない。
バスケは詳しくないが、流れはわかる。
互角の攻防で、点差もほとんど開かず、後半戦へ。
**「お前のせいだ!この身体重すぎる!」**
**「お前の胸がデカすぎるんだよ!」**
**「私のせいじゃないわ…」**
汗だくで罵り合う(?)彼らを見て、なぜかほっこりする。
**「良かった…こんなささいなことで喧嘩できるなんて、幸せなことだ」**
これが母性なのか?それとも、ただの安心感か…
予選は楽勝だった。決勝候補同士の対決だ。
**「さあ、東の日金友好中学対、西の星降私立高校!」**
**「バスケなのに…相撲みたいな紹介だな。次は塩まくのか?」**
冗談はさておき、15分の休憩後、試合再開だ。
**「頑張れよ…応援してるぜ」**
スマホを取り出し、メモを書こうとした瞬間──
**「クソ…またか」**
けたたましい警報音と振動が神経を逆なでする。
**「タロウ、早く…」**
**「わかってる」**
トイレに駆け込み、路地裏から飛び立つ。
**「間に合いますように…」**
**「ちくしょう…こんなに離れてるのかよ」**
仕方ない…沖縄にも敵が現れてる。だから金城も手が離せない。
荒木も遠すぎる…
**「わかってる」**
**「あいつだな」**
海中から現れた巨大なタコが、触手を伸ばして襲ってくる。
**「海の中なら街の被害は気にしなくていいか」**
両手に光を集め、一撃で怪獣を仕留める。光線が弱点を貫いたようだ。
**「タコってのは、口以外は全部柔らかいんだよな。市場の奴と同じだ」**
焼き上がったイカのような怪獣を見て、思わずよだれが出そうになる。
**「…いや、食事どころじゃねえ。ましてや怪獣が食えるわけないだろ」**
**「急がなきゃ…」**
**「…まだある」**
**「まだ?」**
**「ああ。今度は北だ。でもこれなら荒木が間に合うはず」**
**「なんてこった…」**
再び方向を変え、北へ向かって突っ走る。
**「エンプ…連続で怪獣が出るなんて、普通なのか?」**
**「いや。元々怪獣は稀だ。最近増えてるだけだ。善子だって生涯で1回しか遭遇してない」**
**「俺はついてねえな」**
仙台に到着すると、荒木が待ち構えていた。
**「なんだ…遅いぞ」**
**「何言ってんだ!さっきデカいイカ怪獣倒して、急いで来たんだよ!」**
**「美味しかった?」**
**「だから怪獣だって!イカみたいな怪獣!」**
**「ふーん…じゃあこいつをどうぞ」**
目の前には…巨大なカメ。ただし尾はヘビになっている。
**「玄武か…」**
カメの足が地面を踏みしめ、地震が発生。ヘビの尾が音速を超えて振られ、建物がおもちゃのように崩れていく。
**「…こいつは手強い」**
怪獣はこちらの存在に気づき、強力な音波を放つ。
**「うるせえ…!近づけねえ!」**
荒木は痛みに耐えながら瓦礫に飛び込み、怪獣ごと持ち上げる。
**「これが俺の流儀だ!」**
山脈めがけて投げ飛ばす。衝撃で大地が揺れ、木々がなぎ倒された。
**「弱点は…口か!」**
光の球を形成し、バスケのシュートのように正確に怪獣の口へ放つ。
**「グアアアッ!」**
光を飲み込んだ怪獣は体内から輝きだし、苦しみ始める。
**「まずい…荒木!」**
**「了解!」**
荒木は迷いなく突っ込んだ。全身から太陽のような光を放ち、まるでサイヤ人のように怪獣を担ぎ上げ、青空へと駆け上がる。
俺も急いで追いつき、怪獣を支えながら加速する。
**「急げ…さもないと…!」**
亀は最後の咆哮を上げ、超新星のように輝きながら爆発した。
**「はぁ…はぁ…」**
**「セーフ…被害は最小限だ」**
地上で爆発していたら、とんでもないことになっていた。
とはいえ、我々も爆発の衝撃を完全には防げない。魔力温存のため、シールドは最小限しか張らなかった。
**「痛てぇ…」**
幸い大した傷ではなかった。骨折も脳震盪もなく、擦り傷程度だ。
亀の甲羅と蛇の尾がバラバラに砕け、雨のように降り注ぐ。
**「終わった…はぁ…」**
荒木は高層ビルの上で息を整え、こっちを見て頷いた。
**「荒木!ちょっと頼みがある!」**
**「なんだ?」**
**「バスケの試合に戻りたいんだ。途中で飛び出したからさ」**
**「俺たちのクラスを応援したい。頼む!」**
**「条件がある」**
**「なに?」**
**「『メグミ』って呼べ」**
二人の魔力はほぼ底をついていた。赤く点滅する魔法の杖を見て、俺は首を傾げた。
**「…これ何?」**
**「ああ、これか。エネルギー切れのサインだ。空中で魔力切れを起こすと、前回みたいに落ちるぞ。あの時骨折しなかったのは運が良かっただけだ」**
**「そうか…ここだな」**
**「会場は屋外か…俺も観戦していいか?」**
**「いいけど…赤いユニフォームが俺たちのクラスだ。ただし、屋上に突然現れないように。人騒がせだ」**
変身を解くと、荒木の制服は伝統的なセーラー服だった。青と白のチェックにフリルの飾り…やはりJKならこれだよな。
**「あれ、授業は?」**
**「今日はサボった。教師がクソすぎるからな。逃げて正解だった」**
**「…成績は大丈夫か?」**
**「あのクソ教師に頼ってたら終わりだよ。ほら、早く試合を見に行こう。おせっかいだな」**
会場に着くと、試合は最終局面を迎えていた。
100点台で拮抗する中、このフリースロー3ポイントが決まれば相手の勝利だ。
**「相手のフリースローか…」**
先頭に立つヒカリがシュートを打つ。エースはやはり違う。女子ながら、誰もが認めるチームの柱だ。
ボールは美しい弧を描き、見事にネットを揺らした。
**「あーあ…」**
でも仕方ない。勝敗は時の運だ。
相手チームが喜び抱き合う中、味方も肩を叩き合い、複雑ながらも失望のない表情を浮かべていた。むしろ、どこか安心したような…
すると相手チームが突然こちらにも抱きついてきた。
**「お前らも入ってこいよ!」**
一気に場が和み、勝者と敗者が一緒に笑い合う奇跡の光景が広がった。
**「これでいい…スポーツマンシップだ」**
命を懸けた戦いじゃない。ただのゲームだ。終わればまた友達だ。オリンピックだってそうだろう。
この平和な光景を見て、思わず微笑む。
**「こんな笑顔…守る価値があるよな」**
屋上で足をぶらぶらさせていた荒木も、この様子を見て笑みを浮かべた。エネルギーが充填されたのか、さっと変身すると、風を切って飛び去っていった。
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