第5話 時に拳を 時には花を

……太郎。君が授業をサボるなんて珍しいね。

あ?ああ……そうだ……

全部で二時間もかかった。

……ナオはどうして許されたの?

ナオにとっては大変だったろう。私だったら言い訳が見つからない。

えーと……あれ……

エンプにも聞けない。

どうしたの?何か言えないことがあるの?

校長先生のオーラがどんどん強くなって、何も言えなかった。

おれ……おれ……


……結局、何も言わなかった。

ああ…久しぶりに授業をサボったな。

もういい加減にしてくれ。あの先生、またダメだ。

そうだ。

私は先生を見て、先生も私を見た。

この奇妙な雰囲気の中で、私たちの心の中で何かが展開したようだった。

今回は巨人だ…

そうだ。名古屋に。

名古屋…彼は街を狙っているのか?

前はそうじゃなかった。いつも郊外にいた。でも、そんなに頻繁じゃなかった。

それで、いつリュックに隠れて、いつパトロールに出ているんだ?

たぶん…気分次第だろう。

こういうのって、そんなに気楽なことなの?

ふふ。

ふふじゃないよ!


その場所に着くと、確かに巨人がいた。筋肉質で、ほぼ完璧な曲線美。全裸だったが、生殖器がないように見えた。

……いつも違和感があった。

特に彼の容姿。我々の基準からすればまともな方ではあるが、それでも違和感は拭えない。

……だが、あんなに巨大な標的なら、あっという間に仕留められる。

……いや、この前みたいに膿が出ていたらどうしよう。

……短時間で炙って大丈夫なのか?

そうこうしているうちに、充電が完了した。

……ところで、この光線は何という名前なんだ?

……知らない。誰も名前をつけていない。

ああ。それで……一体どんな光線なんだ!


まさに光線を発射しようとしたその時、背後から誰かが襲ってきた。手に溜まっていたエネルギーが逆噴射しそうになったが、幸いにも辛うじて収まった。

……何だって?

その時、異変に気づいた。

ここは数百メートルの高さ?どうやって登ってきたんだ?

……あなたは誰ですか?

振り返ると、目の前にもう一人の魔法少女がいた。

ピンクのドレスを着ていたが、靴はごく普通の布靴だった。…私と同じだ。

オーダーメイドだったのに、みんな同じように見えた。

少しは違いがあるはずだ。でも、そこまでは考えなかったし、考える気もなかった。

あなたは誰?

簡単に自己紹介させてください。私は金城哲子。南日本を守る魔法少女です。

…沖縄じゃないの?どうしてここにいるの? ウンプが顔を出した。彼も彼女を知っているのは明らかだ。

旅行中だ。どうせ台湾が辺境の怪物に対処してくれるだろう。

…台湾?

台湾。もちろん台湾にも魔法少女はいる。

…中国語は話せるか?

あいつは本語を話せるよ。その話はしないでおこう。彼を殺しちゃだめだ。

なぜ?

彼が容赦なく街を破壊し、避難する暇もなかった人々を滅ぼしていくのを見ていると、いつも駆け寄って彼を始末したい衝動に駆られる。

…でも、確かにそうだ。まずは彼を始末しよう。

試したことはないけれど。

両手を合わせると、手のひらから光の粒子がゆっくりと噴き出した。

光の粒子が巨人に当たると、巨人はすぐに落ち着きを取り戻した。手の破壊的な動きも徐々に収まった。

…何が起こっているんだ。

私の浄化粒子には、人を癒し、落ち着かせる効果があり、また、一部の状態異常を解除することもできる。

そして、なぜこんなことをしたのか?…巨人からそれを感じたからだ。

中に誰かがいると感じた。



鎮めた巨人は荒野へ移動させて後で処理しろ。

…どう感じた?

彼は魔力感知能力で有名だったが、こいつは以前見たことがあるか?トリトンはどうなんだ?

地下に戻ったらしい。親戚を訪ねたいとか言っていた。

彼も中年だし…この巨人については…私は見たことがない。

人間は崖っぷちになるほど高い魔力を持っている。知的生命体である限り、普通の生命体よりも上位とでも言った方がいいだろう。賢く人間らしいほど魔力が高い。デワフも同じだ。

だから、以前はモンスターにはあまり注目していなかった。モンスター自身の魔力だと思っていた。モンスターは自然発生的なものだと思われていたが、何らかの理由で、まだ発見されていない深海の片隅や海底に現れたのだ。でも…もしそこに人間の魔力があるとしたら……彼らも知的生命体なのだろうか?

…ありえない。私は人間とデワフォの区別がつくし、他の知的生命体が人間と混同されることなどない。

…では、この巨人は人間によって改造されたのだろうか?ずっと黙っていたエンプが突然提案した。


…確信はないが、おそらく…

…誰が改造したのか?

わからない。全く手がかりがない。いずれにせよ、私たちの世界にはこの技術があるはずがない。

…まさか彼らではないだろう。…

彼ら?

ルルイエ、地下世界のカルト組織だ。地上を占拠していた組織もそうだ。だが、彼らの技術ははるかに強力で、私たちもそれについてより深く知っている。おそらくあなたのインドネシアの地下にあるはずだ。

インドネシア…

だが、今はこいつに対処する方法を考えよう。さあ、着いた。

シベリアの草原だ。世界最大級の無人地帯。基本的に誰もいない。

…飛翔能力がなければ、ここに置いていくことも不可能ではない。

しかし彼は何も言わず、ただ静かに突撃を始めた。

この技はチャージに1分ほどかかり、体力を消耗してしまうので、普段は使わない。使わなければ死んでしまう。でも、善子くらいの戦闘力があれば大丈夫だろう。

…知ってる?ウンプは静かに言った。

え?メッセージ送ってこなかったの?

ところで、名前は?

おれの名前は太郎。一ノ瀬太郎。よろしくね!

太郎だよね?…もっとアドバイスをくれ。

話しているうちに、突撃は完了した。

実際、倒している間も攻撃を続けてた。でも、無駄だった。徹子は盾を開いて防いだ。

あれ…エンプ?

どうしたの?

盾を開く…魔法少女の基本技?

そうだろう。でも善子は滅多に使わない。防護シールドを開くより、スピードで勝ち、一気に相手を殲滅させる方が好きなんだ。

避けた技で周囲に与えたダメージはどうなんだ?

…それは彼には関係ない。

技が放たれた。光の粒子と比べれば、今の技は太陽光線のようなものだ。暖かく柔らかな太陽光線だ。

この太陽光線の下、巨人の攻撃は徐々に止まった。そして血肉が崩れ始め、骨格が現れ、そしてその骨格も崩れた。

…どうしたの?

これは正常だ。これはこの体全体が変化の産物であることを示す。ただ元の状態に戻しているだけだ。

彼がそう言うと、骸骨さえも崩れ落ち、宙に浮いた人影だけが残った。

そして彼は自然と自由落下を始めた。

結界は消え、浙子も変身を解いた。どうやら彼は掴まっていられないようだ。

私は大して気にせず、猛スピードで駆け上がり、哀れな男を捕まえようとした。

その時、彼の顔を見た。

……たった今?


楽しい土曜日が台無しになった。

ああ、仕事ってこういうものなんだ。

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