第3話 女の子だって暴れたい

「今回のモンスターは福島にいます」

「ええ!?今すぐ行ってください!」


「日曜日なのに出勤ですかぁ...」

「魔法少女に休日はありません!はい、急行特急で!」


「給料は出るんですか?」

「現金でお支払いしますよ~銀行経由だとFBIにマークされちゃうから。政府とも提携してますし」


「税金や保険は?」

「リアリストだなぁ...善子はそんなこと一度も聞かなかったのに。私たちの時代にはそんな制度なかったから」


「地下文明では?」

「私有財産すらありません」


「共産主義?」

「似てるけどソ連とは違います。さあ、行きましょう!」


雲を突き抜けた瞬間、飛行機とニアミス!そして現れたのは...


「でっかい鳥!アホウドリみたいに真っ白!」

「今度の敵は変わり種だね」


ライトセーバーを振るうも、高速移動する標的に当たらない!


「伸ばしても届かない!もっと高く飛べば...」

「憎たらしい!」


逆に羽ばたきで砂嵐を起こされ、初めて出血。


「エンプ!聞こえる!?」

嵐の音で声が届かない。


「くそっ...最終手段だ!」

エネルギー充満前に光波を発射!嵐を一掃し、鳥群を撃墜。


「当たった!でもダメージが...」

「十分だ!この一瞬の隙が勝機!」


「魔力使い過ぎ!危ない!」

もう一度トリガーを引き、光の粒子に変身。マッハ5で怪鳥の腹を貫通!


「成功!」

「やったね!」


変身解除して自由落下...エンプがキャッチ。


「ありがと...ってあれ!?」

突然の人型の襲撃者!黒い体に金色のライン、殺意満ちたオーラ...


「...やばい」

「え?何が?」


「こいつ...『良い息子』のオーラがする...」


「は?私エンプサよ!わかる?」

沈黙。


「...逃げよう。魔力切れだし」

しかし黒い男は幽霊のように追跡。紫色の光弾が炸裂!


「もう無理...魔力尽きる...」

「待って!もう少し!」


速度が落ち、追いつかれる...


「私...死ぬの?」

「ごめん...体を返せなくて」


「あなたの体で生きて...十分だよ...」

「さよなら...このクソ世界...」


その時!ピンクの魔法少女が登場!


「私は北海道の荒木絵美!援軍よ!」

「助かった...!」


黒い男は苦悶の表情で紫色のエネルギーを放射。街が破壊されていく...


「これは...何だ?」

荒木がピンクのバリアで封じ込め。


「強い...!」

「耐えられる...?」


「こいつ...モンスターでも魔法少女でもない」

「善子の気配が...」


「感じない?」

「無理...」


バリア内で男が暴れる。


「殴りに行こう!」

「馬鹿!状況わかってる!?」


「私の『ウォール・ミネルヴァ』は完璧...のはずが...」

初めて本気の持久戦に苦戦。


突然、男は頭を抱えて苦しみだす。


「魔力切れ?」

「...声が聞こえる?」


「@-#-#!」

「何言ってる?」


「@-#-#!」

「待って...何か...」


男はバリアを突破、黒い点となって消える。


「はぁ...はぁ...逃げた...」

「帰還許可...もう限界...」


「話し合いましょう」

「どこで?」


「私の家がいい?隣の工事うるさいから」

「了解。ウンプさん、ナビ頼む!」


「おっけー!」

「ここが善子の家か…何も変わってないな」

荒木絵美はソファにどっかり座り、まるで自分の家のようにくつろいでいる。どうやら頻繁に来てるみたいだ。


「引っ越してなかったの?」

「え?2年前にメールで連絡したよ?君にも送ったはず」


「あ…メールか」

スマホを確認すると、確かに未読メールが。

「ごめん、数ヶ月メール見てなかった…」


「マジかよ…」 絵美は呆れたようにため息をついた。



「魂の入れ替え技術って…SFみたいだな」

「魔法少女が言うなよ!」絵美が笑い飛ばす。


「地底人もこんな技術持ってるの?」

「聞いたことないね。仮にあったとしても倫理的にアウトでしょ。地上人の方が大胆だわ」


「ははは…どうやって選んだんだろうな」

「あ、テレビで特集してた!やっぱりヤバい技術だよね」


「…実際に体験してる私からすれば、十分現実だよ」


「君の服装が違うのも納得。で、本名は?」

「一ノ瀬太郎。でも『太郎』って呼んで」


絵美は満面の笑みで頷いた。初めてしっかりと彼の顔を見る。


シンプルなTシャツにジーンズ。でも瞳はキラキラ輝き、整った顔立ち。どう見ても…


「君…外国人みたいだな」

「ああ。アイヌ民族だ」


「アイヌ!?初めて会った!」

「珍獣みたいに見るなよ」少しムッとした様子。


「ごめん、北海道行ったことないから…」

「怖いの?ははは。まあ慣れたよ。『初めて見るもの』ってだけだ」


「そうだね」

「でも正直、私が失礼だった」


「大丈夫。善子も君も、みんな友達だ」

知り合って10分で友達呼ばわり。でも悪くない。


「はぁ?絵美が来たぞ」

「善子のお母さんだ」


「彼女が善子じゃないってわかってる?」

「ああ。メールで知ってる」


絵美の拳が震える。

「この計画、保護者に説明必要だな…どの政治家のアイデアだ?次期内閣で大問題になるぞ」


「今は待つしかない。3ヶ月だ」

「…間違ってる。絶対間違ってる」


「デモでもするか?計画を早めさせるために」

「あ、そうだね!」


「今から動く。あの子の父親も連れてくる」

そう言うと、あっという間に消えた。


「すごい行動力…」

「政治的自殺行為だ…なぜこんなことを」


「民主主義じゃないからさ」

「え?」


「我々の国は千年以上続く王制だ。選挙もあるけど、最終決定権は王にある」

「よく知ってるな…」


「千年間、地上と関わってきたからね」

「サティアはそんなこと言わないけど」


「あいつは不注意だから理解してないんだよ」


「ところで、日本に他の魔法少女は?」

「金城ゆいって子がいる。機会があれば紹介する」


「せっかく北海道から来たんだ、お土産は?」

「いらないよ。初めてじゃないし」


「チケット高くない?」

「まあまあだね」


「東京を楽しんで」

「了解」


ドアを閉めると、絵美を軽く突いた。

「うまい嘘つきだな。一銭も使ってないくせに」

「バレたらまずいから」


エンプが笑いながら言う。

「慣れてるみたいだな」

「ははは。で、魔法少女の仕事は慣れた?」


「まあまあだよ…今のところ大したことないし」

「そっか。じゃあ戻るよ」


魔力も回復し、ゲームを再開する様子。


「わかった。じゃあな」

「バイバイ!」


ピンクの魔法少女姿は、彼の気さくな性格とミスマッチだ。窓から風のように飛び去っていった。


「この色、どうやって選んだの?」

「魔力で決まるんだ。文系の私には理解不能だよ」


「文系か…」

「じゃあドラマ見るね。この前の漫画、途中まで…」


「私も行く」

「普段は何してるの?パトロールだけ?」


「たまに同級生と集まってゲームしたり音楽聴いたり」

「音楽?聞かせて」


地底人のヘッドホンから流れるのは…


「これ…何の音楽?」

「説明できないけど…評価不能だね。歌詞も一言もわからない」


「僕たちの音楽はこんな感じ」

「地上でも聴けるの?」


「地磁気を利用してる。地球の磁力線内ならどこでも」

「先進的だな…」


「50歳って言ってたけど、まだ新人なの?」

「我々の寿命は1000年から。50歳は子供みたいなものだ」


「入学は?」

「善子の1年前。5年前だ」


「それまで何してた?」

「学校だよ。長寿命だから教育期間も長いのさ」


「こんな質問するのは君が初めてだ。200年前の政策改革以来、誰も聞かなかった」

「どういうこと?」


「以前は話すこと自体が禁じられていた。今は自由になったが…関心を持つ者がいなかった」

ヘッドホンを付けながら静かに言った。

「君が最初だ」


窓から青空へ飛び立つ彼。あの窓が二つの世界を隔てていた。



「何食べてるの?」

昼休み、学校の屋上。


手作りの弁当を開ける。天ぷらと唐揚げの日の丸弁当。中央の梅干しが爽やかだ。


「エンプは?」

「ああ?花崗岩だよ」


「地底人は石を食べるの?」

「そう。マグマ生物だからね」


私の料理の腕はなかなかのもの。ご飯の炊き加減も絶妙で、エビと鶏肉の衣もサクサク。


「この石、何が特別なの?」

「花崗岩と玄武岩が主食。黒曜石は超高級品で、幸運の印だ」


「地下にも動物はいる?」

「いるけど…都市住民はまず見ない。環境汚染でね」


「交通手段は?」

「『ピフロスト』という巨大パイプだ。私はエリートだから使えるんだ!」胸を張る。


「地殻横断に10時間…領土は広くないんだ」

「さらに奥は謎だらけ」


「異世界の噂か…メモしてもいい?」

ノートに書き留め始める。


「公表されても陰謀論扱いされるだけだが…なぜ?」

「ただ知りたいから」


食事を再開すると、エンプが呟いた。

「面白いやつだ」


「モンスターはもっと深い所から来てると思う?」

「そんな圧力下で生物は…」


突然考え込む。


「ああ。我々もそう考えた」

「…なぜ気づかなかったんだ」


すぐに上司に電話をかけ始めた。私は反論せず、美味しい天ぷらを頬張った。

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