第23話この家に2人の名前を刻もう
「ねぇ、こないだの家具屋さんで話してた“いつかマンション”の話なんだけどさ」
平日の夜。夕飯を食べ終えて、リビングで並んで座るふたり。
遥がちょっとだけ真面目な顔で切り出した。
「うん?」
「……わりと本気で考えてもいいかなって、思ってる」
「本気って、契約とか?」
「うん。いろいろ調べてたらね……私の会社の住宅補助、ローンにも適用されるんだって」
「え、マジで? 賃貸だけだと思ってた」
「私も。前はそう思ってたんだけど、社内の人が教えてくれて。で、もしマンション買うなら、名義は私の方が補助も出るし、お得らしい」
「なるほど……それは確かに、遥名義の方が合理的だね」
「うん。別に“私のもの!”って言いたいわけじゃないの。むしろ、“ふたりの家”になるからこそ、ちゃんと考えたくて」
「それ、すごくいいと思う。名義とか関係なく、ふたりで作っていくって感じ」
笑い合いながら、ふたりの間に流れる空気は、少しだけ未来のかたちを帯びていた。
「この先、何十年と住む場所だからさ。ふたりでちゃんと選びたいね」
「うん。“ふたりの家”って感じのする場所がいい」
会話の合間、窓の外では風がカーテンをやさしく揺らしていた。
“ふたりで住む家”に、“ふたりの名前”はまだ並んでいないけれど。
その扉の前に、確かにいま、足を踏み入れようとしていた。
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