第5話 他者への問い
「……お前がこの世界に来た理由を聞こう。」
破壊神の言葉に、タローは微かな笑みを浮かべた。
「ではお教えしましょう。次はどの世界に行こうかなーと思いながら、魔法で作ったこの超ハイテク金ぴかタブレット型端末“異世界リスト”で色々眺めてたら、ここがあまりにもひどい状況だったので、逆に興味が湧いたから来てみたって感じですねー。」
「異世界リスト……?」破壊神の眉が僅かに動く。「お前はいったい……?」
「あー……まあ、ただの旅人ですよ、ええ。そんなことより、破壊神さんは後悔してるんですよねー?この世界を滅ぼしたこと、創造神さんをやっちゃったこと。」
破壊神は視線を伏せた。タローの言葉はまるで破壊神の心の奥深くに触れるかのようだった。
「そうだ……私は力を求め、その末にこの世界の全てを滅ぼしてしまった。私に出来ることなど、もうない……。」
「へー、なるほどー。じゃあ、罪滅ぼしできるチャンスがあったら……あなたはどうしますかー?」
その問いかけに、破壊神の目が微かに揺らめく。それは一体どういうことなのか。彼には想像もつかなかった。しかし、もしそれができるのなら、彼はこの虚無から抜け出し、再び命の息づく世界に戻ることができるのだろうか──
「……そんなもの、あるはずがない。」
破壊神は自身に芽生えた微かな希望を打ち消すかのようにそう呟いた。しかし、タローは全く動じずに軽い調子で続けた。
「ふふん。世の中何が起こるか分からないものですよー。とりあえず、ちょっとお散歩しながらお話しましょう。破壊神さんが力を求めた理由とか、この世界で何があったか。多少は興味ありますしねー。」
タローの軽妙な誘いに、破壊神は不思議と断る気になれなかった。途方もない孤独な歩みを続けた彼にとって、この旅人の存在は、ほんの僅かながら温かさを感じさせるものだったからだ。
そして二人は、荒涼とした世界を並んで歩き始めた。破壊神が長い孤独を経て初めて出会った他者と共に進む道に何が待ち受けているのか、破壊神自身もまだ分からなかった。
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