第6話
――静かな旅路
オレとルゥは今日も元気に歩き続けていた。賑やかな街を抜け、緑豊かな山道へと差し掛かった。風は穏やかで、日差しが心地よく肌を包む。普段は賑やかな旅が多かったが、今日はあえて静かな一日を過ごすことにした。
「なあ、ルゥ、今日はゆっくり歩こうぜ」
「きゅぅ~(うん、今日はのんびりできるね)」
ルゥは軽く尻尾を振りながら、オレの足元をついて歩いている。二人の足音だけが響く、何とも心地よい静けさの中で、オレは歩きながらふと考えた。
「最近、ずっと忙しくてさ。なんだかんだで気づけばあちこち行ってたけど、たまにはこうやって何も考えずに歩くのも悪くないよな」
ルゥがうんうんと頷いた。彼はいつもオレの側で、どんな時でも明るく支えてくれる存在だ。
「今日はどこまで行こうか?」
「きゅぅ!(特に目的地があるわけじゃないし、適当に歩こう!)」
「そうだな。ゆっくりまったりがオレらの旅だもんな」
二人はただのんびりと歩きながら、道中で見かけた小さな村で休憩することにした。村は小さく、住人たちも穏やかに過ごしているようだった。村の広場では、子どもたちが遊び、老人たちが静かに話し合っている。まるで時間がゆっくり流れているかのような、心安らぐ空間だった。
「ちょっと休んでいこうか」
「きゅぅ~(うん、ちょうどいいね)」
広場の地面に腰をおろし、バッグから水筒を取り出して水を飲んだ。ルゥも横でうとうとと目を閉じて、まったりとした時間を楽しんでいる。オレは何も考えず、ただ静かに景色を眺めながら深呼吸をした。
「こういうのが一番だな」
しばらくして、村の人々が親切に声をかけてくれることがあった。彼らは、旅人として来たオレに、地元の新鮮な野菜や果物をおすそ分けしてくれた。オレはありがたく受け取り、ルゥと一緒にそのまま村の広場で軽い昼食を取った。
「新鮮な果物って、本当においしいな」
「きゅぅ~(ほんとだね!)」
その後、昼寝をするかのように少し横になりながら、二人は無駄に時間を過ごすことがなぜか心地よかった。
「このまま一日、何もない日が続けばいいなぁ」
「きゅぅ~(そんな日があってもいいよね)」
午後になると、村の周りを散歩することにした。歩いていると、小川が流れていて、そこには小さな魚が泳いでいた。オレはその場に立ち止まり、手を水に浸けてみる。
「冷たい…」
ルゥも川辺に腰を下ろし、楽しげに水面を見つめている。時折、オレの腕にちょっぴり引っかかるように尾を振りながら、小さく鼻を鳴らす。
「さっきの果物が美味しかったから、今度はお前にも新鮮な魚でも…いや、まぁ、今日はただ歩くだけだな」
「きゅぅ!(うん、今日は何も考えずに楽しもう!)」
そのまま二人は歩きながら、特に何か大きな出来事が起こるわけでもなく、ただただ自然と触れ合いながら過ごしていった。
夕方になり、村を後にしようとしたとき、村の広場で出会った老人がまた声をかけてきた。
「おい、若者たち。今夜、村の広場でちょっとした宴が開かれるんじゃ。よければ顔を出してみんか?」
「宴ですか?」
「まぁ、簡単なものじゃが、皆で食べて飲んで、歌ったりする程度じゃが、楽しんで行っておくれ」
オレは少し考えた後、ルゥを見てから笑顔で頷いた。
「じゃあ、ちょっと顔を出してみるか」
「きゅぅ!(楽しそう!)」
村の広場に戻ると、確かに宴の準備が始まっていた。村の人々が集まり、歌を歌ったり、料理を囲んで笑い合ったりしている。普段の旅の忙しさとは全く違う、のんびりとした時間が流れていた。
「たまには、こんな平和な時間もいいもんだな」
「きゅぅ~(うん、最高だね)」
オレはルゥと一緒にその場に腰を下ろし、食事を楽しみながら、ふとこう思った。
どんなに忙しくても、こうやって無駄に過ごす時間が、一番幸せなのかもしれない。
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