第7話
――魔法薬店にいらっしゃい
オレとルゥが歩いていると、街の外れに目を引くような小さな店があった。まるで周囲の風景に溶け込んでしまっているかのように見えるが、その怪しげな看板だけが異常に目立っていた。
「なんだあれ…?」
オレはルゥに目を向けて、店の看板を指差した。
「きゅぅ~(なんか変だね…)」
看板には「魔法薬店」と書かれているが、その下には「絶対に試すな!」と赤い文字で警告が書かれている。まるで注意を引こうとしているかのようなデザインだ。
「絶対に試すな…だと?逆に気になるな」
好奇心が勝ったオレは、ルゥと一緒にその店に足を踏み入れることにした。
店に入ると、まず異様な香りが鼻をつく。草や花の香りに混じって、なんだか妙に甘いような、でも鼻をつんと刺激する香りが漂っている。店内には色とりどりの薬瓶が並べられ、棚からはガラスの瓶が所狭しと並べられている。店の奥には、フードカバーの下に何かがちらりと見える台があり、さらに小さな看板が置かれていた。
「きゅぅ~(なんだか不安…)」
ルゥも少し尻尾を下げ、警戒している様子だ。オレはちょっと気にしながらも、店の奥に進んでいった。すると、棚の後ろから、しわがれた声が聞こえてきた。
「おや、いらっしゃい。珍しい客だねぇ」
オレが振り返ると、そこにはちょっと変わった雰囲気の店主が立っていた。白髪の老紳士で、丸眼鏡をかけ、黒いローブを羽織っている。顔は年齢以上に不気味に青白く、まるで長年薬草の匂いに囲まれてきたかのような顔つきだ。
「こ、こんにちは…」
オレが少し戸惑いながら挨拶をすると、店主はニヤリと笑った。
「まぁまぁ、気にするな。ここに来たからには、少しばかり試してみたくなるだろう?」
店主が小さな薬瓶を取り出しながら、オレに向かって不気味な微笑みを浮かべる。瓶の中には、色とりどりの液体が入っていて、まるで何か不思議な力を秘めているような輝きを放っている。
「これなんて、特におすすめだ。**『目を覚ます薬』**だよ」
「目を覚ます薬?」
オレは興味本位で尋ねるが、少し警戒しながらもその瓶をじっと見つめた。薬は、青く光る液体の中に小さな泡が立っていて、見るからに不安定そうだ。
「これは…一体、どういう効果が?」
店主は得意げに目を細め、言った。
「これを飲むと、君の目が覚める…いや、目が覚めすぎるのさ。だが、気をつけろ。もし目が覚ましすぎたら、どんな現実でも見えてしまうからね」
オレは目を見開いた。だが、そんな謎めいた説明だけでは、興味を引くどころか、むしろ怖さを感じた。
「じゃあ、これは…?」
オレが棚に並べられた別の薬瓶を指さすと、店主はにやりと笑って言った。
「それは**『笑いの薬』**。飲むと、どんなシリアスな状況でも笑いが止まらなくなる。戦闘中に飲めば、敵も笑って攻撃してこなくなるかもしれないぞ」
「う…それもなんか危ない気がするけど」
「どうだ、どれか試してみたくはないか?」
オレは少し考え、そしてルゥの方を見た。
「おい、ルゥ、どうする?どれか試してみるか?」
「きゅぅ~(僕はいいかなぁ…)」
ルゥが少し首を傾げると、オレも「やっぱり無理しない方がいいか…」とつぶやく。
その時、店主が何やら思いついたように言った。
「それなら、君にぴったりのものがある!」
店主はすばやく棚の奥からさらに一瓶を取り出し、オレに差し出した。そこには奇妙な色の液体が入っていたが、他の薬とは違ってとても不自然にきらきらと輝いている。
「これが**『活力の一滴』**。飲むとすぐに元気が出て、疲れも吹っ飛ぶ…が、問題は、飲んだ後におかしなことになることだな」
オレは半信半疑でその瓶を見つめた。だが、店主の顔があまりにも真剣だったので、思わずそれを手に取ってみる。
「一滴だけ飲めばいいんだな?」
「そうさ、ほんの一滴でいい」
オレは勇気を出して瓶を開け、一滴だけ口に垂らしてみた。すると、瞬間的に体の中に熱が広がった。
「おわっ、うっ…!」
次の瞬間、体中にエネルギーが満ち、オレは驚くほど元気になった。 まるでどこまでも走れるような気分だ。だが、その後、突然オレの体が不自然に跳ね上がり、まるで風船のように浮かび上がってしまった!
「な、なにこれ!?」
オレは空中で足をばたばたさせながら、店内をぐるぐる回転してしまう。
「きゅぅ!?(ユウ、大丈夫!?)」
ルゥは慌ててオレを追いかけようとするが、オレは天井近くまで上がってしまい、まるでゴムのように弾んでいる。
「これ、どうすればいいんだよぉ!!」
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