吸血鬼ギャルは山賊おじさんと旅がしたい

「……さて、てめえが最後か?」

「ひ、ひぃぃ……か、金なら出しただろう! これ以上何を……」

「金はいいんだよ、俺が勝手に持っていくからよ。……てめえからいただきてえのはその命だよ。俺の舎弟のを持ってっただろ?」

「ま、待て! 話せばわかる! だ、第一、そんなことしてヤツが浮かばれると」

「知らねえなそんなこた。浮かばれてえなら浮かばれるだろ」

「そんな……」

「あーれ、もぉそいつだけ? 生きてんの」

「……誰だ姉ちゃん」

「ま、まさかぁ……!」

「ちょっとお腹すいちゃってーちょっと夜のランチしにきたんだけどー、おっさんがじゃんじゃんぶっ殺すから、全然血ぃ足んないんですけどー」

「ひっ……ち、血ぃぃ!?」

「ねーおっさん、そいつあーしに譲ってくんない? 喉乾いちゃってさー」

「おめえ、吸血鬼か」

「そそそ」

「……おめえらが吸うのは処女の生き血じゃねえのか?」

「えーふっる、そんなじじー達の変態趣味押し付けんなし。あーしまだ200歳のちょー若手だし」

「……若手ね」

「だからぁ、あーしまだまだ食べ盛りっていうか? だからほれ、その死にかけあーしにちょうだいよ。いいっしょ?」

「よ、よくないよくない! なぁあんた、山賊かなんか知らないけどよう!」

「あ?」

「謝罪ならいくらでもする、なんでもするから助けてくれ!」

「いや、俺もてめえぶっ殺しにきてんだけど」

「そんなこと言わないでぇ……へへ、ねぇミスター、そのご様子じゃ相当〝たまって〟んじゃねえですかい? あっしのとこで飼ってる女奴隷全部差し上げますから、どうかこの通り……」

「……本当か?」

「! もちろんでございますとも! 若いのからそれなりの、乳のでかいのから細いのまで、よりどりみどりでございますよ! ほら、これがそいつらを閉じ込めた牢の鍵で」

「……そうかぁ」

「ねー、あーしシカトすんなしー。てかおっさん、このオカネモチっぽいやつにばいしゅー? されちゃった感じ?」

「ん? いや?」

「えっ!?」

「飯にしてえんだろ? 好きにしろよ」

「えっえっ」

「やーり、じゃあいただいちゃうねっ」

「えっえっえっ」

「えい」

「あ゛っ」

「ほー、首ポキからの血吸いなのか」

「ん」

「は……かっ」




「ごちそーさま。でもおっさん、良かったん? あいつ命乞いしてたしょ」

「してたな」

「助けなくて良かったん?」

「返事してねえからな」

「うわ鬼」

「それにただ俺が殺すより、人のためになった方がいいだろ、最期くらい」

「え、気使ってくれた感じ? ありがと」

「でも、あんな屑の血で良かったのか? 奴隷虐待の常習だぞあの奴隷商人」

「あー……どーりで美味しかったし」

「うまかった?」

「うん。あーし、業の深い人間の血が好きなん。ほら、苦味っていうか? 大人になってから好きになる味っていうか?」

「ほーん」

「ね、おっさんは何してる人?」

「俺? ただの山賊だ。あの屑に舎弟を殺されてな。お礼参りに来たところであんたと会ったってところだ」

「へーえ……でも、おっさんただの山賊じゃないよね? 匂いでわかるよ」

「……あ?」

「あーし、鼻がいいんよ。おっさん元々は結構ちゃんとした人だったんじゃん?」

「……地位だけはな。昔の話だ」

「ふーん……ねえ、あーしと組まない?」

「あんたと? なんで?」

「どーせ悪いやつばっかし狙ってんでしょ? あーし連れてってよ。そいつらの血飲みたいし」

「……なるほどな」

「どお? 死なないし、強いよあーし。真祖じゃないけど大丈夫そ?」

「そりゃ別にいいが……。じゃあ一緒に来るか」

「うん! あーしカーミラ、おっさんは? 何て呼べばいいし?」

「おっさんでも親分でも好きに呼んでくれ」

「おっけ、じゃーいこっかおやびん!」

「どっちでもねえのかよ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る