第4話「ダンジョンの法則」
人型の怪物を倒した夜、俺は火を焚いて洞窟の隅で眠った。体中が軋む。肋骨の痛みが抜けないが、生きていることが奇跡だった。
目が覚めたとき、ステータスに変化があった。
《レベルが3に上昇しました》
《スキルポイント+1》
スキルポイント。それは自分の能力を“進化”させる鍵。影縫いの応用もできるし、新たなスキルを得ることもできる。
だが俺は迷わず《影縫い》に注いだ。
《影縫いがLv2になりました》
体の奥に熱が走る。影糸がより濃く、鋭くなっていくのが分かる。影を縫い止める力が強くなり、持続時間も伸びた。
「これで、次はもう少し余裕ができるか……」
そう思った矢先、洞窟の壁に微かな文様が浮かび上がっているのに気づいた。
古代文字――だが、なぜか読めた。
『この地にて十の門を越えし者、冥府の扉に至らん』
十の門。つまり、このダンジョンには“階層”があるらしい。そして俺は、まだその一つ目を越えたに過ぎない。
まだ九つもある――しかも、“冥府の扉”という不穏な言葉。
気を引き締めた俺は、洞窟の奥へと歩を進める。やがて、第二層への道らしき急な石階段に辿り着いた。
だが、その手前で異変が起きた。
「……あれは……」
壁際で小さく震える影。人の子――少女だ。
ボロボロの布をまとい、髪は乱れて顔も見えない。だが、かすかにこちらを見ていた。
「生きてる……?」
俺が声をかけると、少女は怯えたように首を振った。
「近づかないで……呪われる……」
「……呪い?」
「わたし……触れた者の“運”を食べちゃうの……だから、みんな死んだ……」
俺は思わず息をのんだ。生きた人間、それも“呪い”という力を持つ存在。
だが、俺は一歩近づいた。
「ここで死ぬのを待つのか? それとも、一緒に出口を目指すか。選べ」
少女の目がわずかに揺れた。
「……名前、きいてもいい?」
「……ユウト。お前は?」
「……リリィ」
少女は震える手を伸ばし、俺の手を取った。
呪われた手でも、俺には構わなかった。なぜなら――この地獄で生き延びるには、“呪い”すらも力になる。
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