第17話 白すぎたが故に

「レオ、元気かい?」と少しぎこちないながらも平常心を保つエリオット。


 レオは「エリオット兄さん……知らない奴を四人も連れてきて何の用?」と警戒心を見せながらも五人を招き入れた。


 エリオットが「レオ、さっきブレンダンの所に行ったよ。彼は街の分断を解消し、私と彼と君、兄弟三人で協力して街を統治することに前向きだった。」と明かすと、レオは少し驚いた様子を見せた。


 続けてエリオットが「私は、君が街の発展よりも人の流入の否定を優先する理由を知りたい。」と尋ねると、レオは「僕は……街の外の人間を信じない。あいつらは街を荒らし、汚していくんだ。盗賊と変わらないよ。」と呟いた。


 ギルはその言葉に少し苛立ちを感じ「どういうことだ?お前、盗賊がどういう存在か知った上で言ってるのか?」と咎めた。


 ローナはギルをなだめた後「レオ、そこまで言うからには街の外から来た人がそれ相応にひどいことをしたの?」と尋ねる。


「……外の人間は、街の壁や家に落書きをしていくヤツもいるし、青果店の店先に並んでた果物を盗んでいくヤツもいた。この前やってきた観光客なんて、街のシンボルである父さんの像に登って遊んだり、落書きしたり、まるで悪ガキのように振る舞っていたんだ。あいつらは僕たちの父さんを馬鹿にした……許せるわけがないだろ。」と言って怒りを露わに肩を震わせるレオ。


 遅れてやってきたブレンダンはその話を聞き、「おいおい、レオ……そういうヤツらは俺もムカつくし、親父の像で遊ぶヤツに会ったら俺もキレてるけどな、それを理由に街の発展を滞らせるのは、街の統治者としてどうかと思うぜ?」と呆れた様子を見せた。


 流石のエリオットも呆れ果てる。

「レオ……私もブレンダンと同意見だ。確かに、時には品性にかけた者も外からやってくるだろう。でも、そういった者がこの街にはいないとも限らない。今のままの君では、ちょっとしたきっかけで街の住民さえも信じられなくなり、いつか危うい思想を持ってしまうかもしれない。だから、君の人間性が十分に成長するまで、ブレンダンを私がサポートする形で、二人でこの街を統治するよ。」


 レオはエリオットの言葉に一瞬反論しようとしたが、すぐに言葉を飲み込んだ。彼の表情には混乱と無力感が浮かんでいた。

「兄さん……。僕は、ただ街を守りたかっただけなんだ。……でも、それが結果的に街を分断させてしまったんだね……。」


 エリオットはレオの肩に手を置き、優しく語りかけた。

「レオ、君が街を守りたいと思う気持ちは分かる。だが、その思いが怒りや偏見に囚われてしまうと、正しい判断ができなくなることもある。統治者である私たちは、冷静に状況を見極め、柔軟に対応することが大切なんだ。」


 アルフも一歩前に出て言葉を添えた。

「レオ、俺たちも旅をする中で多くの困難に直面してきたが、人を信じることの大切さを学んできた。世の中には悪人も少なくないが、それが全てじゃない。人を信じることでしか、真の平和や街の発展は実現できないんだ。」


 ブレンダンがレオの方に手を置き、微笑みながら声を掛ける。

「レオ、俺たちは兄弟だ。いつかお前が一人前になった時は、三人で助け合ってこの街を良くしていこうぜ。兄貴も俺も、お前が大きな間違いを犯したとは思ってない。お前が今の自分を見つめ直して、新しい一歩を踏み出せばいいんだ。」


 レオはしばらく黙っていたが、やがて深いため息をつき、少しだけ笑みを浮かべた。

「兄さん……そして、旅人の皆さん…ありがとう。僕はまだ未熟だってことが分かったよ。これからは、もっと冷静で柔軟な考えを持つように努めるよ。」


 エリオットは安心したように微笑む。

「それでいいんだ、レオ。いつか三人で力を合わせて、この街を立て直していこう。」


 その後、エリオットとブレンダンは協力して街の分断を解消するために動き始めた。一方、レオは外界に対する偏見を無くすべく、エリオットの勧めでしばらく旅に出ることになった。アルフたちは街が再び一つに戻り、平和な日々を取り戻す様子を見守りながら、次の旅路へと向かうのだった。

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